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利吉side
利吉「よいしょ、っと」
どさっと、床に荷物を置いた。
振り向くと、
Aは部屋の入り口で突っ立っている。
なんだかなぁ、その佇まいでさえ可愛すぎて。
利吉「A、入らないの？」
『いや、あの………ここって』
Aは不思議そうに、
きょろきょろと部屋の中を見渡している。
利吉「あぁ。ここは、連絡場所に使われている」
『連絡場所？』
利吉「あぁ、私たち忍者のね」
ここは町の大きな通りから
一本路地に入ったところにある、建物。
表向きは宿を営んでいるのだが、
Aに言ったとおり、忍者の連絡場所として
使われている。
利吉「私も時々、泊まることがあるよ」
『そ、そうなんですか……』
おいでと手招きすると、
Aはやっと部屋の中に足を踏み入れた。
そして畳の上に正座する。
そんなにかしこまらなくて良いのに。
利吉「さて、」
手ぬぐいで髪をさっと拭き、小袖と袴を脱ぐと
『えっ……！！』
どうしてか、Aが慌てだす。
……あぁ、もしかして
『ちょ、利吉さんっ……？！』
ばさっと浴衣を羽織り、Aの前でしゃがむ。
利吉「……A、」
『へ……』
利吉「私に何かされると思ったの？」
頬を包み込むと、Aの顔は真っ赤に染まる。
『ちっ、ちが……』
利吉「いやらしいんだ……」
そう言って、鼻先にちゅっと口付けた。
もう何度口付けしたかわからないのに、
いまだに顔を真っ赤にして、
初めての口付けのような反応をするんだから。
これだから、愛しい。
『り、利吉さんっ……恥ずかしい』
利吉「ん？」
ぐん、とAは私の胸を押す。
利吉「あぁ、ごめんごめん」
浴衣のはだけた胸元を整えて、帯をきゅっと結んだ。
利吉「じゃぁ、続きはまた後でね？」
『つっ、続きっ……て！』
Aの唇を撫でてから立ち上がり、
濡れた小袖と袴を干す。
利吉「すぐ乾きそうだよ」
あぁ早く、
あのぽってりとした唇に口付けたい。
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作者名：はな
| 作成日時：2021年6月5日 22時
