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利吉side
出茂鹿くんは土手を駆け降りて、
私たちの傍まで走ってきた。
私とAも、一旦川から上がることにした。
利吉「そんなことより、
なんで君がここにいるんだ？」
せっかくAと楽しく過ごしていたのに。
そう思うと、言い方もつい冷たくなってしまう。
というか、そもそも私の大切なAに
手を出そうとしている奴なのだ。
優しくする必要はない。うん。
出茂「なんでって……
忍者の派遣の仕事が終わった帰りなんだ。
そしたらAさんを見つけて……
あ、まさか僕を待っていたとか？」
そう言って出茂鹿くんは、
Aの両手をぎゅっと握った。
『お、お疲れさまです』
利吉「待っていたわけないだろう。
ほら、Aに触るんじゃない」
するりとAの手を奪う。
Aも、お疲れさまです、じゃなくて。
なんだ、前よりAへのアプローチの仕方が
パワーアップしていないか？
出茂「あっ。……しかしフリーの売れっ子プロ忍が
のんびり川辺で水遊びとは」
いちいち嫌な言い方をする奴だ。
はぁ？と思わず言いかけたところで、
Aが先に口を開いた。
『そうなんです！
利吉さんがね、遠出しようって言ってくれて』
あぁ、なんて……
『そのために仕事を調節して、
時間を作ってくれたんですよ』
なんて、幸せそうに話すんだろうか。
『だから私、嬉しくって嬉しくって。
……ね、利吉さん』
そう私を見上げて少し頬を染めて微笑むAに、
苛々としていた心が落ち着いていく。
そうだ。
Aが笑ってくれるなら、それでいいのだから。
利吉「私もAと過ごせて嬉しいよ」
ここぞとばかりに
見せつけるようにAに笑いかけて、
ふたりの雰囲気に浸る。
ざまぁみろ。
すると、あからさまに不満顔を浮かべた出茂鹿くんが、勢い良くAの手を引いた。
『わわっ』
出茂「僕と行こうよ、Aさん！」
そしてAの手を引き、
ざぶざぶと川の中へ入っていくじゃないか。
利吉「あ、こら！！」
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作者名：はな
| 作成日時：2021年6月5日 22時
