【忍たま】利吉さんはいじわるだ。④【山田利吉】 (ページ11)

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you side

『変じゃないかな』

鏡台の前で溜め息を吐く。

今日は利吉さんとお出掛けの日。

すっごく楽しみにしていたのに、
今日になってみれば緊張している。

少しでも可愛いって思ってほしくて
少しでも利吉さんに釣り合いたくて

朝から鏡台とにらめっこしていたけれど、
諦めて布を掛けた。

『利吉さんが素敵すぎるのが悪い』

利吉「え、ごめん」

『ひぃっ！？』

音もなく現れるの、やめてもらえませんか。

利吉「じゃぁ、行こうか」

『はい』

ふたりで外出するのは久々で、なんだか新鮮。

歩き出すと同時に、利吉さんが話し出した。

利吉「"利吉さんが素敵すぎる"、だなんて」

『う……』

利吉「しかもそれが"悪い"なんて」

『ち、違うの。利吉さんに釣り合いたいって
　思っても、なかなか難しいなって』

恥ずかしい。でも、自信がないんだもん。
もっと、利吉さんが自慢したくなるくらいの
恋人になりたいのに。

利吉「……やっぱりその小袖、良いな」

『え……あ、ありがとうございます』

いつか褒めてくれた小袖。
バレンタインのお返しにもらった髪紐。

利吉「化粧もして、可愛い」

そう、今日は少しだけお化粧もしてきた。
利吉さんは私の唇にちょんと指で触れる。

利吉「Aはいつだって可愛いのに」

『そ、それは嘘っ』

利吉「嘘じゃないよ。
　こんなに可愛い恋人で、私は幸せ者だ」

ね？と、そんな素敵な笑顔で言われたら……
私は利吉さんの手をぎゅっと握った。

◆◇

『わぁ、』

町を少し歩いてからやってきたのは、
キラキラと水面の輝く川辺。

利吉「暑くなってきたしさ。涼しげで良いだろう？」

『気持ち良さそう。入っても良いですか？』

利吉「いいよ……あ、待って。一緒に行く」

履物を脱いで足を浸そうとすると、
利吉さんは慌てるように私を止めた。

利吉「ごめん、心配で」

あぁ、もしかして

『前の、こと』

以前、私がひとりで川辺に訪れたとき
増水した川に足を取られて流されてしまった。

意識を失った私を、
必死に助けてくれたのが利吉さん。

私たちの想いが通じ合った日でもあるんだけれど。

利吉「そう。私が守るから大丈夫だよ」

利吉さんは履物を脱いで、私の手を取った。