【忍たま】私に、確かに刻んで【善法寺伊作】

私よりむしろ ページ8

you side



今日も変わらず、私は仕事に出ている。


忙しい日も大変な日もあるけれど、
伊作くんに会えたから大丈夫。


少し会えただけで、こんなに元気になれるから。

伊作くんって、すごい。






『ありがとうございました』




忙しかった店内も、やっと落ち着いてきた。




「今日も忙しそうですね、Aさん」



『あ、こんにちは』




お客様を見送って席を片付けていると、
すぐ側の席に座る青年に声を掛けられた。




『今日も来て下さったんですね』



青年「えぇ、お茶とお団子が美味しくて」




彼は最近よく来てくれる、常連さん。



私より少し年上で、
仕草や話し方なんかがとても爽やか。

いつも空いた時間に来て、話し掛けてくれる。



奥さんも、素敵な方ねって言ってた。




私は爽やかな水色のような彼の雰囲気より、
柔らかい桃色のような伊作くんの雰囲気の方が……




青年「それで、Aさん」



『……はいっ、なんでしょう？！』




彼はぼんやりしていた私に、花を見せた。


花びらの先にいくに従って桃色が濃くなっていく、
とても綺麗な花。




『わぁ可愛い！蓮華草ですね』



青年「ここへ来る途中、蓮華畑を見つけて」




とても綺麗だったので、と
彼は蓮華草の束を私の手に握らせた。




『とっても綺麗……ありがとうございます。
　お店に飾らせてもらおうかな』



青年「えぇ、是非」




さっそく花瓶を探すため席を離れようとすると、




青年「Aさん」




手を、引かれた。




青年「あ……すみません、えっと。
　 蓮華草の花言葉を知っていますか？」



『えぇ、なんだろう。可愛いお花だから……』




幸福とか優しさ、とか？




すると彼は、少し照れたように
綺麗な笑顔を私に向けた。




青年「……"心がやすらぐ"なんですって。
　 Aさんみたいですよね」




へ？と、口が開いた。
いや、そんなこと……私よりむしろ、




『貴方の笑顔で心やすらぐ女性の方が
　多いと思いますよ』



青年「そ、そうですか？」






私の手を握ったままの彼の手は、熱かった。









奥「あらあら……大変ね、Aちゃん」

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