小悪魔な君と自称天使な私【桐嶋郁弥】

事実（2） ページ31

「水上さんってモテるんだな」

は…？

急に言われた思いもよらない言葉に、開いた口が塞がらず、呆然としてしまう。

そりゃあ18年間生きていて、人並みには告白されたりはしたけれど、
全部断ってきたから、未だに“彼氏”という存在を作ったことがない。

そんな私がモテるとは、今まで誰にも言われたことがなかった。

前にいる菜穂に目を向けると、菜穂も少なからず驚いているようで、ただでさえ大きい目をさらに大きく見開いていた。

「んん？水上さん？

どうしたの？」

川島さんもー、と言いながらほわほわとした笑顔を見せる相模くんにようやく言葉を返す。

「えっ、と…相模くん。

なんで急にモテるって…？」

そう尋ねると、ようやく菜穂も戻ってきたのか少し興奮気味に言う。

「なにかあったの!?」

私は全く状況が分かっていないのだが、恋バナが大好きな菜穂は何か分かったのか、目をキラキラさせている。

「え、だって二人もお見舞い来てたよね？

しかも男子、見たことなかったけど…後輩？

二人目の子なんか特に、窓開けて空気入れ替えたりしてて、すごい甲斐甲斐しいんだなーって思ったんだ」

隣のベッドいたからよく分かってさー
絶対水上さんのこと好きだよねー
、と相模くんは続けたが、全く耳に入ってこない。

二番目に入ってきた子が窓を開けた？

確か、あのとき私は急に入ってきた爽やかな風の匂いで目覚めたのだ。

だとしたら…キスしたのは二人目の人。

ひーちゃんと桐嶋くん、どっちが先に…

「…A！

5時間目サボろ、屋上行くよ！」

考え込んでいると、さっきよりも更に顔に喜色を浮かべた菜穂が私の腕を掴んできた。

「え？ちょ、菜穂っ」

声を荒げるが、菜穂には関係ないようで教室を出ようとひっぱってくる。

仕方ない、と5時間目の授業を諦め、菜穂に引っ張られるがままになっている私に相模くんは手を振った。

「保健室ってことにしとくねー」

…ありがとうございます、相模くん。

事実（3）→←事実（1）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す