妖界ナビ・ルナ～彼に恋した半妖怪～part６ (ページ42)

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第６.４１話　お別れと「ありがとう」ページ42

驚いたように
その光景を見ていた朱雀に、私が言う。

「まだまだ元気になっていないけれど、もう枯れてしまう危険はないと思う」

朱雀はホッとしたように、紅見草を見下ろした。
すると、もっけが声をかける。

「今度は朱雀の番だぜ」

彼女はすべてを察したようだった。

一番元気になった紅見草をそっと抜くと、
それに口を寄せる。

ふぅっと息を吹き込むと、言った。

「この根をすりおろして乾燥させた物を飲ませてみれば良い。
すぐによくなる。これ一本あれば、百人の命を救えるだろう」

結局、紅見草は毒にも薬にもなる植物だったんだ。
私達が、朱雀にありがとうと言うと、照れたように笑った。

その笑顔は、花のように可愛らしいものだった。

～･～･～

数日後、村人の病が治ったのを見届けた後、
私達は日向村を後にした。

旅立ちを前に、私はもえぎちゃんと二人で
話したことを思い出していた。

もえぎちゃんの記憶は、私の揚力を知ってしまった
部分だけ、スネリによって消し去られてしまっている。

そのことに、私は少しだけ寂しい気持ちでいた。
けれどそれで良かったのだと、今は思っている。

もえぎちゃんはわかってくれていたから。

彼女は特別な能力を持つ少女。

私と似ている部分があるからこそ、悩み、
孤独な気持ちで居ることが、お互いに通じ合えた。

ずっとこの場所に居られたら、きっと親友になっていたかもしれない。
──私はそう信じていた。

「紅見草のこと……」

私が終わりまで言う前に、もえぎちゃんは
“任せといて”と、右手を差し出した。

私は彼女の手をしっかり握りしめて、お別れを言う。

それから、“ありがとう”も一緒に。