妖界ナビ・ルナ～彼に恋した半妖怪～part６ (ページ40)

今日:32 hit、昨日:3 hit、合計:14,253 hit

第６.３９話　忘れ去られてページ40

「朱雀! 四神の一人か」

もっけもスネリも、
電流に打たれたように動く事が出来ない。

小さな赤い実は、中から炎を灯したように輝きだして

パンッ!

音をたててはじけた。

その途端、辺りが朝日を受けた霧の様に、赤く染まっていく。
霧が晴れた時、一人の可憐な少女が立っていた。

目に染みるような赤い衣をまとい、

肩で切り揃えた黒髪が
ゆらゆらと揺れる、美しい少女だ。

「貴方が、朱雀……」

私が呆然と立っていると、
朱雀は私にふわふわと近付いて来た。

足が地上三十㎝ほど浮いている。
しかも、その姿は幽霊のように透けて居た。

「そう。私は朱雀」

朱雀は私を見る。
瞳は、綺麗なオレンジ色。

「貴方は……」

「私は、白銀──……。竜堂A」

思わず、ついこの間まで呼ばれなれていた名を
名乗ろうとしてしまったが、

四神を相手に名乗るのならば後者の方が適切だろう。

「竜堂……古の陰陽師と同じ名。もしかしたら……」

「そう。私の父は陰陽師だったの。そして母は妖怪だった」

「妖界……すると、Aは陰陽師の血をひく妖怪……」

朱雀は目を見開いた。

「では、伝説の子というのは、Aの事なのか」

金縛りがとけたように、
ようやくもっけが言う。

「どうやら、Aの事は知ってたらしいな。朱雀、おいらはもっけ」

「私はスネリ。貴方は朱雀の名を忘れ、
長い間、この紅見草の精霊だと思い込んでいたという訳なのね」

朱雀は頷いた。

「私も、人々から忘れ去られていた。南の方位を司る事が
私の務めだったのに、いつしかそれすら忘れ、

うつつをぬかしている時に、紅見草の精霊に捕まってしまった。
紅見草の精霊は、すでに命尽きて居たのだが、その魂が私を捕まえた」

「人々に忘れ去られたという気持ちが同じで、リンクしてしまったんだわ」

スネリが言う。

「しかし、朱雀。あんたの力は強力すぎた。今も苦しんでいる村人がいる」

もっけの言葉に、
朱雀はいやいやをするように首を振った。

「私が悪いんじゃない。村人がいけないんだ」

その姿は、外見と同じ幼い少女のようで。

「朱雀、お願い。貴方なら、どうしたら
村の人が助かるかわかるでしょう。貴方の力で助けて」

「嫌だ。私も同じ思いをしているから、紅見草の精霊の気持ちが
わかる。今まで散々利用して、忘れ去られ、命尽きそうになった気持ちが」