妖界ナビ・ルナ～彼に恋した半妖怪～part６ (ページ38)

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第６.３７話　通ずる言葉　　祝200個目! ページ38

もっけの声を繰り返す、虚ろな声だった。

「紅見草の精霊さんが、何故毒を吐きだし、村人を苦しめて居るんだ」

『私を忘れた村人の事など、知るものか。
私は間もなく命尽きる。放っておいて』

「悪いけど、そういう訳にはいかねぇんだ。あんたが毒を撒き散らして
いる事で、苦しんでいる人達が居る。放っておくわけにはいかねぇ」

『面倒な妖怪。静かに寝かせて、そのまま死なせてほしかったのに』

紅見草は、か細い声で言い終ると同時に
大量の粒子を一気に噴き出した。

粒子は煙のように舞いあがって、私の結界を一気に破き、
私ともっけを強く飛ばし、地面に叩きつけた。

「A、もっけ!」

叫んだスネリが素早く駆けつけると、妖力で私達の体重を
軽くし、引き摺りながら木の陰に横たえた。

「しっかりして……」

一瞬、気を失っていた私はすぐに目を覚ますと
バネのように起き上り、赤い実を見た。

「いけない、あんなに小さくなっちゃっている。
早くやめさせなくちゃ……」

赤い実は、既に拳程の大きさになっている。

「A!」

そう、スネリが止めるのも聞かず、私はジャンプすると
両手で目を覆い、赤い実をめがけて突進した。

ガサッ

赤い実はかわいた音をたてて、
私と共に倒れる。

『なにをするの』

紅見草の言葉は、私の耳には微かにしか届かない。
私は必死になって目をつむりながら、赤い実を抱きしめる。

黄色い粒子が、私を取り囲んだ。
呪符をのんでいても、その力は強力。

私の目からは涙が溢れ、胃がせりあがる苦しみに襲われた。
私は何度か、もどしそうになっては、堪える。

「聞いて、紅見草さん。貴女を、忘れて居ない、人が、いるの」

紅見草には、多分私の声は届いていない。
しかし、少しの間、赤い実は粉を吐きだすのを止めた。

「貴女の、泣き声を聞き、貴女が、
寂しがって、いることを、知っている子が、いるの」

開けて居られない目を瞑りながら、
必死に訴える。

「その子の、名前は、もえぎ、ちゃんという、んだよ」

『も……･･え……･･ぎ』

その時、私の耳にも確実に聞こえてくる。

赤い実の奥底からくぐもって
聞こえてくる、紅見草の声だった。