妖界ナビ・ルナ～彼に恋した半妖怪～part６ (ページ32)

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第６.３１話　紅見草伝説ページ32

もえぎちゃんの必死の様子に、
私は思わず言ってしまった。

「もえぎちゃん……わかった。話して」

スネリはその間も必死に、妖力を
肉球に集め、もえぎちゃんを守って居る。

私も密かに、片手でもえぎちゃんの
手を握り、もう片方の手でペンダントを握る。

「紅見草には、伝説があるの」

そう言い始めて、おじいさんから
聞いた話を聞かせてくれた。

～･～･～

むかし、天からのつかいである雀が
羽に怪我を負って、この日向村に落ちてきた。

通りかかった心優しい若者が手厚く介抱し、
傷が癒えるまでそばに置いておく事にしたのだ。

天のつかいである雀は、若者の言葉を理解し
若者とすっかり仲良くなった。

若者の家は粗末で、病気の母親が居る。

まともな薬が買えないので、
母親はずっと寝たきりだった。

しかし、雀が来てからというもの、母親は
そのさえずりに心癒され、いつしか笑顔も多くなった。

ところが、雀の怪我が治り、すっかり
回復すると、天からの声が雀を呼んだ。

かえってきなさいと。

～･～･～

もえぎちゃんは、そこで一つ
苦しそうに、深く息をはき出した。

「無理しないで」

私が言うのに、もえぎちゃんは
ゆるゆると首をふって、話し続ける。

～･～･～

雀は迷った。自分が居なくなれば、
この年老いた母親は気落ちしてしまう。

病気も酷くなってしまうかもしれない。

しかし一番の理由は、雀自信が
若者と母親と別れる事が辛かったのだ。

天からの声は、雀にこう告げた。

『あと一週間の時間を与えます。その間に帰って来なければ、
天への道は消え、貴方は2度と戻れなくなります』

雀はギリギリまで迷い、最後の日に決断した。
ここへ残ろう。若者と母親と暮らそう。

～･～･～

「三人で暮らすんだな」

そう言うもっけの声が聞こえた。
私と暮らす自分たちの事を考えたのかもしれない。

～･～･～

それからきっちり三年、雀は生きた。
雀が死んだ後、若者はその亡骸を、丘の上に埋めた。

翌年には、そこに一輪の赤く美しい花が咲いた。

花はとても良い香りで、茎や根には
万病を治してしまう魔法のような効き目があった。

村に疫病が流行った時でさえ、紅見草のお陰で
村人達は大事に至らずに済んだのだ。