妖界ナビ・ルナ～彼に恋した半妖怪～part６ (ページ31)

今日:8 hit、昨日:3 hit、合計:14,229 hit

第６.３０話　紅見草だったのねページ31

「!!」

「A! その煙を吸い込むな。すぐに九字を切れ!」

私が訳がわからずに、左手で鼻と口を覆うと、右手で九字を切った。

しかし、その花から出た煙が一筋、生き物の様に飛び
私の目をめがけるようにして襲った。

「い……ッ!」

「「A!!」」

私が座りこむと、スネリともっけが飛んで来る。

煙はすでに消えていたけれど、
私の目からは涙が溢れていた。

「大丈夫か、A」

「うん……呪符を飲んでいたから、助かった。この煙は……」

「凄まじい妖力を感じるわ。
本当の妖力は、こんなものではない筈よ……恐ろしいわ」

「なんだって、こんな草花が……」

「紅見草だったのね」

「…………!」

声が聞こえた。私が驚いてみると、カシの幹に
よりかかるようにして、もえぎちゃんが立っていた。

「もえぎちゃん!」

私は、あわてて髪をゆわえていた
チョーカーを首に巻き、第三の目を封印した。

運よく、もえぎちゃんの位置からは、
私のうず目や項の第三の目は見えなかったようだ。

「ここに来たら駄目……」

私はそう言ってから、はっとした。
もえぎちゃんの顔色が真っ青。

私が駆け寄ると、もえぎちゃんの顔は冷や汗でびっしょりだった。

「大変!」

手を伸ばすと、足元から崩れ落ちる。
体を支えて横たえると、スネリがその額に肉球をおしあてた。

「やっぱり……。貴方達には、不思議な力があったのね」

荒い息の中で、私を見上げている。

『喋ったら駄目だよ。体力が消耗するぞ』

梟姿のもっけが私の肩にとまると、
心配そうにもえぎちゃんを覗きこんだ。

その時、もえぎちゃんがもっけに頷いた。私ももっけも驚く。

『おいらの言葉が聞こえるのか』

「Aちゃん、この梟さん、もっけさんに似ているね」

「う……うん、もっけが飼っているペットなの。
それより、早く帰らないと」

私がスネリに合図して、スネリが
その尻尾でもえぎちゃんを眠らせようとした。

すると、私の袖を掴んで

「お願い、聞いて」

と言ったのだ。

「Aちゃんに伝えなくちゃ。Aちゃんには凄い力が
あるのよね。私にはわかる……だからこそ、紅見草の事を……」