妖界ナビ・ルナ～彼に恋した半妖怪～part６ (ページ30)

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第６.２９話　不自然な枯花ページ30

スネリの指示で、村はずれのこんもりとした低い丘に降り立った。

なだらかな丘からは、村の集落が見渡せる。
私達は身を守る為の呪符を既に飲んでいるけれど、油断は禁物だった。

この村には、人は一人として居ない。
でも、スネリの鼻は妖しい力を持つ生命力の気配を捉えて居た。

「この辺りから匂っていた筈なのよ」

スネリは用心深く歩いた。
その後に私が続き、もっけも密やかに円を描くように呼ぶ。

そのうち、スネリは林の下草に埋もれる
ようにある埃まみれの地蔵を見つけた。

「これは……」

言いながら、ゆっくりと地蔵に近付く。

「このお地蔵さんが匂いを放っていたのね。
でも、へんね。ここから生命力は感じないわ」

私も訝しげにしゃがみこむと、地蔵と向き合った。
見た所、石で出来た普通の地蔵にしか見えない。

風雨にさらされ、手入れされていないようで、苔むして汚れている。

「忘れ去られたお地蔵さんなのかな」

九字を切ってから、そっと地蔵を触ってみた。
何の変化もなく、ざらついた石の感触があるだけ。

そのままじっと地蔵を見つめて居ると、私の視線は下草に向いた。
雑草にまじって、枯れた草花が不自然に広がっている事がわかったのだ。

ドライフラワーのように茶色く枯れた
草花が、雑草の中にまだらに広がっている。

枯れて居るのに、土に埋もれる事なく
立ちあがって茂っている状態は不自然だ。

「あっ! これって……紅見草?」

枯れて居るので変色しているけど、沢山の花弁を持つ
蓮華に似た花の形は、民宿で食べた紅見草と同じ物だった。

「おぅ、確かにそうだ」

もっけも驚いて返事をする。

「どうして枯れちゃっているのか……」

言いながら、その花に手を伸ばそうとした時。

「A! 触っちゃ駄目!」

そう叫んだ。しかし、既に私の右手の
中指は、乾いた花弁に触れている。

その途端、草花の全てが粉々に砕けてしまった。
砕け落ちる瞬間……

プシュッ!

圧縮した空気が吐き出されるような音と共に、
花弁の中心から、勢いよく黄色い煙が吐き出された。