妖界ナビ・ルナ～彼に恋した半妖怪～part６ (ページ29)

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第６.２８話　苦しい思いをするのはページ29

『もえぎちゃんが聞いた声の主。それから、私達の他の、
得体の知れぬ力を持った者。わからない事だらけだわ』

宙をきっと見据えながら、スネリがそう言う。
そこで、私は一人、考える。

得体の知れぬ力を持った者。
それが、最後に聞こえた大人の女性の声なのではないか、と。

しかし確信が無かった為、二人には言わずに黙って居た。

「Aちゃん」

その時、もえぎちゃんが私のそでをひっぱる。

「私、村へ戻って、誰が泣いているのか確かめたいの」

私は驚いた。スネリともっけも慌てている。

「駄目よ、危険すぎるわ」

「そうだよ。まだ原因がわかっていないんだろう。
村に入った途端、具合が悪くなってしまうかもしれないんだぜ」

しかし、もえぎちゃんは
強い意志を感じる眼差しで、首を振った。

「私、呼ばれているのがわかるの。行かなくちゃいけない」

また、私は驚いた。自分でも
わからない内に使命を感じている女の子。

それは私の姿そのものだったからだ。

彼女になら、自分の秘密を
打ち明けてしまっても良いかもしれない。

一瞬、そう思ったものの……。

すぐにその思いを振り払った。
ここに旅立ってくる前に決めた筈なのに。

辛い、苦しい思いをするのは私だけで良いんだ。

唇を噛みしめて、それを再度確認した。

もえぎちゃんに重荷を背負わせるわけには……。
しかも、彼女と私には決定的な違いがある。

彼女は人間。しかし、私には
半分妖怪の血が流れているところ。

この違いは、天と地を分けるほどの大きな物だと言う事。
スネリはそんな私を見つめた後、もえぎちゃんに言った。

「今日はもうやめておきましょう。お父さんも
心配するでしょうから、改めて、またにしましょうね」

納得してなさそうなもえぎちゃんに、
そう良い含めると、4人は隣町行きのバスに乗る。

役場で別れた後、私達三人は村へとって返す事にした。

人通りの少ない裏道に行くと、スネリは猫姿に
もっけは大きな梟姿に変化して、その背中に二人を乗せる。

「おいらはこの格好が一番落ち着くぜ」

「そうね。人間の姿は疲れるわ。不便だし」

二人の会話を聞いて、
私は少し俯いていた。何も話さずに。