妖界ナビ・ルナ～彼に恋した半妖怪～part６ (ページ27)

今日:13 hit、昨日:3 hit、合計:14,234 hit

第６.２６話　スゥ姉さんページ27

「えっ、今から?でも、父さんは今日は仕事があるから、
トラックを出してもらえないんだけど……」

それで、もえぎちゃんは
こまった顔をした。

「歩いて行くと1日かかるよね。自転車でも無理だし……」

「……、バスがあるけど。子供達だけで、町境まで行く
バスに乗ってはいけないって言われているの」

中学生にも禁止するなんて、
結構厳しい状況なのだろうか。

「大丈夫!」

思っていると、もえぎちゃんの言葉に、
すぐにもっけが返していた。

「実はもう一人、厳しくてこわーい大人の保護者が居る。名前はス──」

良い終わらない内に、スネリがもっけの足を引っ掻いた。

痛くて声が出せなくなったもっけを余所に、私は頭を
フル回転させてなんとか数秒で名前を導き出そうとした。が……

「ス……、スゥ姉さんと呼んでいるの……」

若干泣きそうになりながらそう言った。
自分のネーミングセンスの無さを悔む。

幾等何でも『ペットのスネリ』と
同じ名前の訳にはいかなかったから……

～･～･～

バスの中は、人間姿のスネリともっけ、
そして私ともえぎちゃんの四人だけだった。

山を登るバスの外は、目に鮮やかな新緑の洪水だ。
三十分もすると、頂についた。

バスが行ってしまうと、私達は展望台に向かう。

太陽に近くなった分陽ざしが強く、肌に鋭く突き刺さるよう。

下ではそよとしか吹いていなかった風が、
私の耳元で唸りをあげている。

スチール柵につかまると、日向村を見降ろした。

段々畑が規則正しく並び、こんもりとした緑の木々は美しく

民家の屋根瓦が日光を反射している様子は、
相変わらずのどかな田舎の風景だった。

しかし、スネリは目を細め、探るように村を見降ろし
もっけもいつになく横顔が厳しいものだった。

もえぎちゃんは、昨日ここで見た時と同じように、
祈るように両手を握り合わせ、目を閉じて居る。

「…………」

実を言うと、ここへ来てから
一度だけ何かを感じて居た。

『でも、それしかないよ。確かに、スネリは変化しない方が
良いかもね。大人だから、怪しまれるし』

『…………?』

『ちょっと待て。車が来る音がする』

あの時の事だ。

車の音が聞こえたから反応したのではなく、
誰かの声が聞こえた気がして……