妖界ナビ・ルナ～彼に恋した半妖怪～part６ (ページ26)

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第６.２５話　町境の山へページ26

翌朝の日曜日。

私は、猫姿のスネリと少年姿の
もっけと遺書に、再び役場に行った。

役場前にはトラックが三台止まって居て、
朝食のパンを配給しているところ。

列を作って並んでいる人々の中で、
もえぎちゃんがすぐに見つかった。

友達の女の子と、笑いながら話している。
もえぎちゃんがパンを貰い終わるのを待って、私は声をかけた。

「もえぎちゃん」

すると、もえぎちゃんは
小さく手を振って、駆け寄ってくる。

「聞いて、Aちゃん。昨日ね、病院から連絡があって、
じいちゃんと弟の病状が少し回復したみたいなの」

嬉しそうに話すもえぎちゃんと
話の内容に、私はほっとした。

「良かったね。この調子で、早くよくなると良いね」

「うん。今は、まだ面会は無理みたいだけど。
でもこの分だと、来週辺りからは面会出来るみたいなの」

「そうか。良かったな。他の村の人もそうなのか?」

「さっき、一緒に並んでいた友達のお母さんの具合も
良くなったって。他にもたくさんいるみたい」

そう言う彼女の声ははずんでいた。

「ほっとしたね……。ね、もしかしたら、
もう日向村の悲しい鳴き声は聞こえないかもね」

ふと思いついて口を滑らせると、
彼女は眉をひそめた。

「そうだと良いんだけど…………」

嬉しそうだったもえぎちゃんの
顔が曇ったので、私は慌てて謝る。

「御免なさい。折角の嬉しい気持ちに水をさしちゃったね」

「良いの。私も気になっていたから。事件の泣き声の事、
関係があるって、Aちゃんやもっけさんも感じて居るんでしょう?」

真っ直ぐなもえぎちゃんの視線に、
私は誤魔化す事が出来ない。

私が思っていた通り、彼女は聡明な少女のようだった。

「それに、ほうっとけない気がする。じいちゃんや弟が少し回復したから、
思えるんだけど。また町境の山に登ってみようと思っているの」

「そっか!」

その叫び声を聞いた周りに居た人達が、
驚いたように私達を見やった。

「いけね」

そう、声を潜めると、続けて言う。

「村には入れないけど、町境の山には登れるもんな。よしっ、早速行こう!」

「えっ、今から?でも、父さんは今日は仕事があるから、
トラックを出してもらえないんだけど……」