妖界ナビ・ルナ～彼に恋した半妖怪～part６ (ページ24)

今日:5 hit、昨日:37 hit、合計:14,263 hit

第６.２３話　紅見草ページ24

その晩は安い民宿を探して泊りまった。
もちろん、スネリともっけは人間姿。

猫とふくろうを連れた中学生の
女の子を泊めてくれるような宿なんて、

百時間かけて探しても無理だろうから。

民宿のおかみさんが、手早く夕飯を用意してくれました。
妖怪であるスネリともっけは食事が出来ないので、

「お腹の具合が悪いから」

と、丁寧にお断りした。

夕飯は美味しそうな山菜の天ぷらに、茶碗蒸し。
山菜の中に、見慣れない赤い蓮華のような花が混じって居る。

でも、花弁が多いから違うだろう。

「この花、蓮華に似ているけれど、違うのね。花弁が多いわ」

見事に私の思った事と同じ事を言う。

花を見ていると、おかみさんは
配膳の手を動かしながら話してくれた。

「紅見草と言って、マメ科の花だから蓮華に似ているんだよ。

この地方にしか咲かない花だけど、味は食用の菊みたいだから、
食べてごらん。昔はたーくさん咲いてたもんだけどね。

今は滅多に見ないねぇ。
今日は珍しく見つけたもんだから、天ぷらにしてみたんだよ」

私は天ぷらつゆをつけて、紅見草を食べてみた。
少し苦くて、確かに菊の味に似ている。

「子供にはちょっと苦いだろうけどね。でも、
ビタミンや食物繊維は豊富だし、解毒作用もあるんだよ。
昔は薬の代わりとして食べられていたくらいだから」

おかみさんの話に、もっけは
ふむふむと頷くと、偉そうに言った。

「紅見草か。覚えていて損はないようだな」

そんなもっけに腹を立てる訳でもなく、
おかみさんは豪快に笑う。

「あははは。面白い兄ちゃんだねえ。
じゃあ、ついでに紅見草の名前の由来でも覚えておくかい?

大昔は『紅海草』と呼ばれていたらしいよ。
それがなまって、紅見草になったんだね。

群生する習性がある花だから。
その様が、まるで真っ赤に染まった海の様に見えてねえ、綺麗だった」

「成程ねぇ」

想像しながら、腕を組んだ。

「ちょっと怖い感じかな」

「いいや、いいや、うんと綺麗だよ。
この町じゃ、もうそんな光景も見られないけどね。
隣の日向村じゃ、それこそ見事な海が見られたもんさ」

その言葉に、私達はハッとした。

「日向村?」