妖界ナビ・ルナ～彼に恋した半妖怪～part６ (ページ21)

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第６.２０話　遠いものを感じてページ21

おじいさんが連れて行かれた病院と同じ、
隣町にひとつしかない救急病院。

もえぎちゃんは急いで、村の農協に居るお父さんに連絡を取った。
農協でも同じように倒れたり、苦しみ出した人が居るようだった。

幸い、お父さんは無事だったので、すぐに病院へ行く事が出来た。

あちこちで救急車のサイレンが鳴り響き、日向村は騒然とした。
そんな事件は、日向村で初めての事だった。

最初は食中毒かもしれないと言われていたが
検査の結果、そうでない事がわかる。

しかし何が原因かは掴めず、翌日も被害者は増える一方だった。

そこで、原因がわかるまでの間、
村民に隣町役場への避難警告が出されたのだ。

もえぎちゃんの話を聞き終ったもっけは
“う～ん”と唸ったきり、考え込んでいた。

「弟君やおじいさんは、まだ入院して居るの?」

そう聞くと、もえぎちゃんは青ざめた顔のまま頷いた。

「うん。二人に会いたい。でも、伝染するかも
しれないからって、面会謝絶なの。すぐ近くの病院に居るのに」

すぐ近くに居るのに、目も合わせられない。
話す事が出来たとしても、触れることは出来ない。

今までの私と同じだった。

双子の兄妹であるタイ兄。
会えた時間は少なくても、私のすぐそばに居た時は何度もあった。

それなのに、触れる事なんて出来なかった。

どこか、遠いものを感じて……。

その時、スネリの尻尾が私の膝をくすぐった。
私がスネリを見ると、スネリはゆっくりと口を開いた。読唇術。

『もえぎちゃんに、どんな声が聞こえたのか、聞いてみて』

それが私の事を思っての事だと気づかず、
私はすぐにもえぎちゃんに聞いた。

「もえぎちゃん、日向村でどんな声を聞いたの?」

聞くと、もえぎちゃんは両手で腕を抱くようにした。

「なにを言っているのかはわからないの。
ただ、泣き声が聞こえてきて……。

それが胸がしめつけられるような、
悲しそうな泣き声で……あんな事、はじめてだった」