6 ページ6
中に足を踏み入れた瞬間、体が痺れた。
キ「あ、すみません。ここの場面なんですけど…」
推しの声が、マイクで会場内に響いている。
「今リハ中だから声聞こえにくいんだ。何かあったら大きな声で!」
スタッフさんにそんなことを言われたけれど、正直頭にしっかり入ってこなかった。
だって、キヨが、いる。
同じ空間にいて、同じ空気を吸ってる。
ステージの上には、すごく小さいけれど確かにキヨが立っているのが見えた。
この仕事に携われて良かった。この空間に1秒でも存在できただけで幸せ。ああ、もう絶対いいイベントになって欲しい。
少しでも力になれるように、頑張ろう。キヨの姿を見て、余計そんな気持ちが強まった。
「じゃあお願いね」
『はい!』
仕事内容を聞いて、指示された方へ足を進める。
わあ、今回のイベントは花道もあるんだな。ここにキヨが歩いてくるのか。
ということは、ここの席の人はこの距離でキヨを見られるんだなあ。羨ましいなあ。
なんて、想像しながら淡々と仕事をこなしていく。
普通、推しがすぐそこでリハをしてるなんて状況下だったら、みんな仕事なんて手につかないかもしれないけれど、私は不思議と仕事をこなすことが出来た。
私の頭、冷静でいてくれてありがとう。
なんて、自分の冷静さに感謝しながら仕事をこなしていたら、私の後ろに人の気配を感じた。
それが誰かなんてすぐに分かった。見るなと自分に言い聞かせたのに、我慢できずにくるりと振り向いて気配を感じた方へ視線を向けた。
キ「あ、それで大丈夫です!」
そこには、大好きなの姿があった。
どうやら花道を歩いて来たらしく、手を伸ばせば届くんじゃないかと錯覚してしまう距離に彼は立っていた。
前言撤回。私の頭は全然冷静なんかじゃなかった。彼の姿をはっきり捉えた私の頭は混乱状態だ。
振り向くんじゃなかった。彼を見てしまった今、完全に仕事どころじゃなくなってしまった。体が言うことを聞かなくて、目を逸らせない。
キヨは会場の客席を確認しているのか、周りを見渡している。
あと少しでこちらを見てしまう。目が合うのはまずい。
早く、仕事に戻らないと。
ああ、キヨと、目が合っ……
177人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みやこ(プロフ) - きょちゃちゃさん» きょちゃちゃ様、コメントありがとうございます( ¨̮ )不定期更新にはなりますが頑張ります!楽しんでお読み頂けると幸いです☺︎︎︎︎ (2022年12月17日 23時) (レス) id: 49dadc6dbe (このIDを非表示/違反報告)
きょちゃちゃ - んんっ...続きがめっちゃ気になります...!更新楽しみにまってます! (2022年12月9日 9時) (レス) @page22 id: a2b9d0ac16 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みやこ | 作成日時:2022年10月7日 14時