【ky】今度は愛していいですか【実況者】

story 32 ページ33

『面白かったねえ』



映画が終わって、感想を言い合いながら焼肉を食べる。




キ「やっぱあのシリーズは外れないよな」


『ね！ 昔キヨくんと見に行ったのも面白かったし』


キ「あー、懐かしいな」



なんて、ダラダラと会話をしながら食事を楽しんでいたとき。



私のスマホが着信を知らせた。



名前の表示を見てみると、そこには"マネージャー"の文字。



なんの用だろう？ 仕事の話だろうか。



せっかくキヨくんといるのに仕事の話なんかしたくないけど、このままスルーするわけにもいかない。



『ごめん、マネージャーさんから。出てもいい？』


キ「もちろん」



キヨくんに一言、断りを入れてから電話に出た。



まさか、この楽しい時間が終わりを告げるなんて、知る由もなく。




『もしもし？ どうしたの？』



私が呑気にそう聞くと、マネージャーさんは落ち着いた声で言った。





マ「明日、Aの熱愛報道が出る」




この世界に飛び込んで、いつかこの日が来ると思ってた。


まさかこのタイミングで来るとは思ってなかったけど。


だって、私は最近キヨくんとしか会ってない。




『私、最近異性はキヨくんとしか……』



あれ？ まさか。



マ「そのまさか。相手は大人気ゲーム実況者のキヨ。これ、Aとキヨさんにとって、朗報？ 悲報？」




何とも言えなかった。



だって昔は付き合ってたけど、今は友達としてご飯とか遊びに行ってて。



要するに、キヨくんは元カノと熱愛報道をスクープされた人間ということになる。



それって、すごく複雑じゃない？




そして私にとっても、あまり良い話じゃない。



ここから"もう一度付き合おう"なんて、言いづらすぎる。




自分の名前を売り出すために有名な人と熱愛報道を撮らせる人もいるらしいし。




ああ、順番がめちゃくちゃだ。最悪。




私はスマホを耳に当てたまま、目の前で心配そうに見つめるキヨくんと目を合わせた。



そして、ポツリと呟く。




『ごめん。私とキヨくん、明日熱愛報道出るって』


キ「え？ ……俺と、A？」


『そう。……私たちが付き合ってるって』




キヨくんは、あからさまに嫌そうな顔をした。


私は痛む胸に蓋をして、そりゃそうだと言い聞かせた。


元カノとの熱愛報道なんて、嬉しいわけない。




私とキヨくんが一緒にいることを感じ取ったマネージャーさんが、これからここに説明に来ることになった。




楽しい時間は、もう終わり。

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