story 31 ページ32
あの日以来、私とキヨくんは友好な関係を再び築き始めていた。
キヨくんお疲れ。次飯行けそうな日、いつ?
なんて、ご飯のお誘いのメッセージが気軽に送られてくるような、そんな仲。
けれど、私が望んだ関係には近付いていない。
あの日決心したものの、ありがたいことに仕事が忙しくて自分から誘えなかったのもあるし、勇気がなくて一歩が踏み出せないというのもある。
でも、ついに一歩踏み出せそうな日が訪れた。
『キヨくん、お待たせ』
待ち合わせ場所である駅の、大きな柱に体を隠すように待っていた彼に声をかける。
彼は目を落としていたスマホから視線を上げて私を視界に捕らえると、優しく目を細めた。
キ「全然待ってない、今来たとこ。最近忙しそうだったな、お疲れ」
『お陰様で、忙しくさせてもらってました。ありがとう。キヨくんも毎日お疲れ様』
キ「サンキュ。よし、じゃ行こうぜ」
こっち、と言うように指をさしてから、その方向に歩き始めた彼の背中を追いかけて隣に並ぶ。
相変わらず身長が高くて、彼の顔を見るときは見上げるという言葉が相応しい。
やっと訪れた1日オフ。
今日は、キヨくんと映画を見に行く約束をしていた。
12年以上ぶりの、デートらしいデート。
キヨくんがどう思ってるかは分からないけれど、今日一歩踏み出して、友達よりも近い関係になれたらいいな、なんて。
キ「今日見る映画さ、俺の友達が主題歌やってんだよね」
『えっ、Eveさん? キヨくんお友達なの?』
キ「そ。散歩友達」
『なにその穏やかな関係』
キ「時間あるときは10kmくらい歩いたりするよ」
『えっ、散歩のレベル超えてない…?』
キ「友達と歩いてたらあっという間だよ」
そんな普通の会話を交わして、キヨくんは映画のチケットを買ってくれた。
お金はいらないという彼へ、お返しに私は飲み物とポップコーンを買った。
『楽しみだなあ、映画久しぶりだ』
キ「観る側じゃなくて出る側だもんな」
『もちろん、家では観るけどね。映画館で見るのは久しぶり…』
そう言いながら、最後に映画を見たのはいつだろうと考えた。
頭に浮かんできた最後の記憶は、12年前キヨくんと見に行ったときのもの。
あれ以来行ってないんだと気付いたとき、私の中の映画館での思い出はキヨくんでいっぱいなことにも同時に気が付いて、少し照れくさくなった。
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あもも - 初コメ失礼します。100票目頂きました!()凄く面白かったです。kyさんの夢小説はあまり読んだことはないのですが、物凄くよかったです!途中で泣けるシーンもあって感動しました。素敵なお話で読んでいて楽しかったです!*^^* (2022年8月1日 1時) (レス) @page42 id: 79394f6964 (このIDを非表示/違反報告)
みやこ(プロフ) - りんかさん» りんか様、コメントありがとうございます。初めての夢小説ということで、数ある作品の中からこの作品をお選び頂けたこと、大変光栄に思います☺️また別の作品でお会い出来れば幸いです。 (2022年7月28日 16時) (レス) id: 49dadc6dbe (このIDを非表示/違反報告)
りんか(プロフ) - ス、すごい、、、初コメと初めてキヨ。さんの夢小説を呼んでみたのですが、こちらの作品が初めてなので新鮮な気持ちになりながら読むことが出来ました!!なんなら途中のところとか気持ち入っちゃって泣きました、、、、笑 (2022年7月19日 3時) (レス) @page42 id: 1914ce7fa9 (このIDを非表示/違反報告)
みやこ(プロフ) - 光希さん» 光希様、コメントありがとうございます☺️楽しんでいただけたようでなによりです!また次の作品もよろしくお願い致します✨ (2022年6月20日 18時) (レス) id: 49dadc6dbe (このIDを非表示/違反報告)
光希(プロフ) - 完結おめでとうございます!読みごたえがあって、全て楽しく読ませていただいておりました。お体にはお気をつけください!次の作品もまた、応援させていただきます。 (2022年6月18日 12時) (レス) @page42 id: a57a548651 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みやこ | 作成日時:2022年4月5日 16時