伊瀬谷ちゃんといっしょ！ (ページ19)

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シンデレラ① ページ19

「好きだよ」

10月29日午前０時、自宅のソファー。
持ち物はノンアルコールカクテルで、目の前には仲村宗悟。

「…え、なに？」

何年も言われ続けてきた言葉をこうも改まって言われると、少し困るというのが本音で。正直、かなり困惑している。

鼻歌交じりにノンアルのカクテルを作っていたのが数分前。
私がそのカクテルに口をつけたのが数十秒前。
そして、宗悟が真剣な顔でそう告げてきたのが数秒前。私がカクテルを2口飲んだ時だった。

「あのさ…今日だけ、もう一回付き合って。」

前言撤回だ。どうやら、よく見てみると『真剣な顔』ではなく、『今にも泣き出しそうな顔』であった。
私がNOと答えると考えているのだろうな、という事は余りにも明白で、今回に限っては「どう答えてはしいのか」などという意地の悪い質問は止しておこうと思った。

さて、早く返答してやらねば、それこそこの男は泣出してしまう。私は腹を括ることにした。

「宗悟」と、なるべく相手に威圧感を与えないようにして名前を呼ぶ。
しかしその効果は薄く、名前を呼ばれた途端、ビクリと肩が跳ねた。

普段はあんなにも元気なのに、どうして今日に限ってこうなんだ、こいつは。と思ったが、何だかその様子が愛らしく、私は少し笑ってしまった。

宗悟は、笑っている私を不思議そうな顔で見つめていた。

「うん、いいよ。付き合おっか。」

笑いながらそう言うと、宗悟は目をぱちくりとさせて、三秒ほど固まった。
本当にこいつは面白いな、フッ…おもしれぇ男。
そう思いながらじーっと見ていると、ぎこちない動きでグラスを持っていない方の私の手をとって
「よろしくお願いします」と、俯きながら言った。

髪の隙間から見える、赤くなった耳をみて、また少し笑った。

シンデレラ

去年と違って、今年は誕生日の配信など無く、完全に1日オフの日だ。
誕生日に完全にオフなのが久々で、どうしようかと悩んでいたところに夜中のあの出来事。
暇潰しにもってこいだと、そう思った。

そう思えたら良かった。
いっそのこと、そう思えるほどに心の無い奴ならよかった、そうなれたらよかったのに。
余りにも真剣で、これで断られたら全部終わり。とでもいいたげな瞳で、とてもじゃないが、私には断ることができなかった。

断れたらよかった。
暇潰しだと割りきれたらよかった。

淡い期待を抱かせるのは相手にとって毒だと、ちゃんと理解しているつもりだった。