ONE DAY LIVE―AnotherSide― ページ15
「もう最後の曲?早いね〜、2時間は経ったってことだもんね?
それじゃあ、行こうか。
え?嫌?私もまだ終わりたくないなー、でもしゃーない!
それじゃ、最後
私が大好きな曲。
僕なりのラブソング」
思わず、え、と声が出た。
大きな声といあわけではなく、ほんの小さな声。風が起きたら消えてしまいそうな、それくらいの声だった。
CDを買った渡したの会話が懐かしくも思えてくる。
いつ合ってもスマホで聴いているのに、聴いていたのに、Aちゃんだけは俺が教えてたものと全く同じコードで。嬉しいとか、こそばゆいとか、色々な感情が混ざりあって、心の中でせめぎ合った。
駄目だよ、歌っちゃ。そんな笑顔で、楽しそうに歌わないでよ。
俺が惚れた笑顔で、夢にまで出てきた笑顔で、歌わないでよ。
俺さ、いい加減諦めたいんだよ。
もう無理だって、いい加減諦めなよって、そう言ってほしい。
いっそのこと、お前なんか嫌いだよ。くらいいってほしい。いや、やっぱやめ。嫌いにはならないで、嫌いって言わないで。
ただ、諦めさせて。
ただの友達になって。
お願いだから、そんな風に、その歌詞を歌わないで。
恋だと気づいたときには遅くて
なんて
遅くないよ、遅くなんてないんだよ。だって俺、まだ諦められてないんだもん。
まだ好きなんだ。
まだ好きでごめん。まだAちゃんを離して上げられなくてごめん。
好きだよ、ずっと、ずっと好きだ。
Aちゃんは辛くなるからって執着しなくてさ、なのに、その事を理解してるのに彼にはずっと執着してるのが、見てて辛かった。
俺じゃないんだって見せつけられてるみたいで、嫌だった。
間奏になってAちゃんの手元をよく見ると、コードの押さえ方が俺と全く同じで、少し笑った。
打ち込みしてるから実物が弾けないけど持ってる。
と言って困ってるのを見て、俺が教えて、今では完璧に弾けるようになってて。
俺が一緒にいた日々は確かに合ったんだな、彼女にとって無駄じゃなかったんだな、と思えた。
あぁ、だめだな。やっぱり、諦めらんねぇな。
ラスサビを聴きながら、そう確信した。
ねぇ、今度さ、また一緒に歌おうよ。久しぶりに、この曲一緒に歌おう。
俺のラブソング、また聴いてほしい。
一生懸命送るよ、僕なりのラブソング。
一列目中央にある、関係者席の真ん中の特等席。
ラストでようやく、目が合った。
ピックを持った手で指さして、俺の方をみて笑った。
「あなたへのラブソング」
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作者名:志賀有栖 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=sab
作成日時:2021年8月14日 1時