【無印】ジョーカーとルーラー (ページ10)

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日々が過ぎるのはあっという間だと思いながら、街灯沿いを歩いた。

日本では、もうじき春になる。
夏休みが終わって、秋が来て、年が明けて。そうして春になろうとしている。

これまでの様々な出来事に想いを馳せて、西洋の町並みの中を歩く。

小さな子供が、フリーのコートでサッカーをしている光景が目には入る。自分にはなかった光景だ。
幼い頃、身近にサッカーをしている人物がいたにも関わらず、俺自身はサッカーをプレイしようとしなかった。
いや、確かそいつからとめられていたんだったか。と、忘れかけいた記憶を呼び起こして、過去を慈しむ。

やけに感傷的になっている自分に対して、短期間で多くのことが起こりすぎたのかもしれないと考えると、ふと歩くスピードを速めた。

イギリス代表に誘われた親睦会で少しいざこざが起き、その後のイギリス戦で無事勝ち抜き、アメリカ戦でも色々とあったが、無事勝利した。
イタリアにも何とか勝てた。

今後の試合で、俺は戦力になれるのだろうか。
女子が大会に参加できないとなっているこのFFIでは、あいつの力は借りられない。
きっとあいつなら、俺が10割の力を出す方法を知っているだろう。だけどきっと、それを教えてはくれないだろう。

色々と、考えてもどうしようもないことを考えていると、気が付いた。
先程から見ていた子供たちの中に、やけに見覚えのある人が混ざっていた。

「そうそう、上手上手。」
「難しいよ～」
「次俺に教えてー！」

笑顔で子供たちにサッカーを教えている姿を見て、思わず唖然とした。
あいつは、他人にあんな風に笑いながらサッカーをするのか、と。まだあんな風に笑えたのか、と。

何年も昔に見た笑顔を、ここで知り合ったであろう子供たちに向けているのをみて、なんとも形容しがたい気持ちになる。

じっと見ていると、一人の少年が俺に気が付いたらしい。
「あー！日本代表の人だー！」
割と大きな子供の声に驚いて、思わず、逃げようと背を向けた。

「気分転換にどーよ、ただの練習ばっかだと気が滅入るよ。」

その声で振り向くと、先程と変わらない笑顔を浮かべてこちらを手招きしているAの姿があった。