【無印】ジョーカーとルーラー (ページ7)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:5,697 hit

#7 ページ7

ゾンビから逃げ惑う人間が力強く扉を叩く時のような音が、Aの室内に響き渡る。

「おい有島！いるんだろ！有島！」

騒がしい声と音に苛立ちながら、Aは一つ舌打ちをしてドアの方へ歩いていくと、わざと音を立てて扉を開いた。

「うるせぇ！」

勢いよく開けた扉の先には、騒がしく扉を叩いていた佐久間と、鬼道が立っていた。
何のようだと思いながら、立っているのも面倒になったAは、開いた扉にもたれるようにして立ち、腕を組んだ。

「やっぱりここにいたのか！」と、佐久間。
いったい何のことだと眉を潜める。

「イギリス代表のナイツオブクオーンから親睦会の誘いが来ているのは知っているだろう。日本代表陣営も全員行くことになっている、お前も着替えろ。」
鬼道がまるで説教をしているかのような雰囲気で、腕を組みながら淡々とAに話しかける。

Aは、鬼道の話を聞いた途端、あからさまに不機嫌になり、また舌打ちをした。

「あ～、その話？監督には具合悪いからパスって言っておいた。」
あからさまな嘘である。

そもそもAは具合が悪ければもう少し元気というより覇気がないもので、分かる人間が見れば、今この現状は『行きたくないがため嘘を付いているA』という何とも分かりやすい状態である。

「駄目だ。第一監督から連れてこいと言われて俺たちはここに来ているんだ、大人しく着替えろ。」
その鬼道の言葉を聞くと、Aは「チッ…あの野郎…」と悪態を付いて、部屋の外へ出た。

鬼道と佐久間は、おそらくこいつはここで何か問題を起こすつもりはないんだろうな。という事を察したが、口には出さず、Aを連れて一階へと下りた。

ライオコット島某所、昼過ぎ。
Aは一人、マネージャー達が煌びやかなドレスを見て、年頃の女の子らしい反応をしているのを眺めていた。
このままパーティーになどでたくない。そう思ったが、それは協調性がないということで問題行動になるのではなかろうか、と考え、一つため息を付いた。

「A先輩、どれにするか決めましたか？」
声を弾ませながら、音無がAに問いかける。Aは、あー…。と、何とも歯切れの悪い返答をした。最も、返答と言えるのか怪しい所である。

「スーツってあるかな？」
良い返事は返ってこないだろうな。と思いつつ聞くと、音無の後ろから、久遠が「少ないですけど、ここにありますよ。」と手元にスーツを持って現れた。