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いよいよ世界へ行くぞ、という状況での練習のこと。
昼休憩に入り、俺は他の奴らから少し離れて昼食を取っていた。飯も食って水分も取って、適度に休憩も取って、いつ練習を再開してもらって構わないほど俺のコンディションは良い。
休憩が長ぇな、と思いながら、待つのも面倒でコートに戻ると、ベンチの周りで連中がやけに騒がしい様子だった。
相変わらず元気な奴らだと若干呆れつつ、ベンチにある荷物を取るために、仕方なく奴らが集まっているベンチの方へ歩き出した。
俺に気が付いたキャプテンが、「おい不動！お前もこっちこいよ！」といつもの様子で呼び掛けてくる。
「俺はそこにある荷物取りに来たダケなんですケドー」
わざわざ説明するのもめんどくさいが、下手に絡まれては更に面倒くさいので、先に要件を伝えることにした。
しかしキャプテンは、なら尚更こいよ。と意味の分からない事を言って、俺の事を手招きして呼んだ。
めんどくさい。だが、ここで大人しく向こうへ行かなければきっと他の奴らにも絡まれて、更にめんどくさいことになるだろう。
俺は壮大にため息を吐きながら、またベンチに向けて歩き出した。
「なぁ、不動！見てみろよ！」
「はぁ？なんだよ」
「いーからいーから！」
心底意味が分からないが、キャプテンに背中を押されて、90度左を向かされた。
そこには、一人のオンナノコが立っていた
「鬼道の知り合い？幼馴染み？なんか帝国のときの知り合いらしくてさー！俺らの新しいマネージャー？なんだってさ！」
正直、キャプテンが言っていることは余りよく聞いていなかった。
いや、耳に入らなかった。という表現が正しい。
そのオンナノコの顔を見たとき、一瞬頭の中が真っ白になり、まるで全身冷水を浴びたような、そんな感覚がした。
俺はこの子を知っている。
鬼道クンの幼馴染みだとかそんなことは知らないが、帝国学園の生徒であるその顔の人物のことは、よく知っていた。
「あ…」
声がうまく出ない。そもそも、何を言おうとしたのかすら、よく分からない。
そんな俺に対して、目の前のオンナノコは一瞬苦笑した。
「ご紹介に預かりました、鬼道有人の知合いの『有島A』です
…なんてね。よろしくね、あっきーな」
見覚えのある笑顔を浮かべながら、酷く耳馴染みのある声で挨拶をする彼女に、俺は何とか声を振り絞った。
「…何回も言うけどあっきーなはやめろって、Aちゃん」
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作者名：志賀有栖 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php?svd=sab
作成日時：2021年9月20日 1時
