スターラブレイション 【吉沢亮】

episode47 ページ47

一人だけ、彼だけが輝いている
黒のスーツ姿は彼を輝かせる飾りにしか過ぎない

いつもそうだ
彼は緊張なんかせずにマイペースで、落ち着いている
裏表なんかないその姿に憧れている




バチッ


…あ、やばい
目が合った


あ、どうしよう。こっちに来る

目が合った瞬間、彼がこちらへ歩いてきた



『お前…』
「…」


司会者:続いて、主演男優賞ノミネートされた5名の方のご登場です！




私に何か言いかけたまま
彼は行ってしまった



菜奈:ユリちゃん、顔色悪いけど…
「え？あ…大丈夫。大丈夫」



大丈夫って言う人ほど大丈夫ではない


誰かがそう言うが
私は昔からそれは嘘だと思っていた

大丈夫だと言い聞かせれば大丈夫なんだと



どうして私は震えが止まらないのか

いつもの緊張のせいなのか



いつもそうだ
優子ちゃんの魔法なんかとうの昔に切れてる


ドレスに着せられてるだけの私

場違いなんて分かってる
周りを見渡せばこの授賞式に相応しい人ばかりだ



…私は？



私は、この式に相応しくない
吉沢に相応しいはずがない



MG:ユリ？ちょっと、この式だけは頑張って！


心配した菜奈ちゃんが呼んできたマネージャーは
私にそう言った

そうだ、頑張らなきゃ
マネージャーはずっと私がここに立つことを望んでいたんだ



MG:ユリ、ここに立つために頑張ってきたのよ？皆があなたの実力を認めたからここにいるのよ？大丈夫、あなたなら大丈夫！




「大丈夫…大丈夫です。」




"大丈夫"


プツンと私の中で何かが切れた音がした





司会者:続いて、主演女優賞にノミネートされた5名の方の登場です！



司会者のその言葉と共にレッドカーペットへと歩き始めた




会場に集う映画界の著名人、そして舞台の主役の方々





その時の私は今思い出しても痛々しかった


並ぶ女優の方々についていくのが必死で
足や手は震えていた
顔色も真っ青で


あれ？
おかしい

横に並んでいるはずの女優の方々が私の目の前を歩いている

あれ？
何で…

…私が立ち止まっているのか




菜奈:…ユリちゃん？


振り返った菜奈ちゃんが驚いた顔をしていた
何で、何でそんな驚いてるの？


ザワザワ…





会場がざわつき始めたのは耳で分かった


「…はあ、あ…あ…」



呼吸をするのが必死で
スクリーンに映る自分の姿を見て気付いた



頬に涙が伝っていたんだ




菜奈:ユリちゃ…



ドサッ

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