この夜を止めてよ Ryo.Yoshizawa

episode17 ページ17

ガチャッ


「…眠…」


あの人、もう行ったのか…。

案の定
シンクには朝の食器が重ねられたまま




ジャー…


…お昼ご飯はそうめんでいいや
眠いから昼寝でもしよう


ドサッ

…最低な妻だ、私は

夫ではなく
その部下を送り出すなんて。


…あ。
今日じゃん

結婚記念日。



「…起きてから考えよ…」



とりあえず目を瞑り、眠ることにした







・



・


パカッ



神木:え、え？何？新しい彼女？？？
"すげー！冷食全然入ってなくね？"

『冷凍食品嫌いな人みたい。』

"えーどんな子とっ捕まえたんだよ〜"
"まさか企画部の？"
"いや宣伝部のあの子？"


夫:なーに男が食堂で群れてんだよ、むさ苦しい


"あ、課長見てくださいよ！吉沢の弁当！"

夫:すげえ凝ってんな！コレか？



『まあ、そんなところです。』

神木:明太子の卵焼きなんて珍しいね〜
"確かに"


夫:そういやうちのもよく入ってるぞ、明太子

神木:課長も毎日弁当ですもんね〜
"よっ愛妻家！"


夫:いや〜今日結婚記念日でね！


"え、そうなんですか？おめでとうございます！"
『おめでとうございます。』




・



・


寝て起きると
誰もいない広い寝室が妙に居心地悪かった


…思い出す


彼に抱かれているあの感覚を

「…あぁー」


絶対なんてないんだ

依存なんて簡単になれるんだ


吉沢君は、上手い
あの人よりも遥かに


御無沙汰なわけではない私たち夫婦だが
当たり前のようにしか情事をしない

でも吉沢君とは


私の身動きや視界を奪ったり
互いが満足するまでの

ねっとりとした行為


癖になってしまいそうな…


「…ワンピース、選ばなくちゃ…」


夜に着ていくワンピースをクローゼットから選ぶ
結婚記念日の朝

自分の部下に抱かれた妻

あの人がそれを知ったらどうなるんだろう



知らないふりして夫婦を続ける？

それとも、私と別れる？


「…」



私は
隆久さんを愛している

愛しているから
こんなちっぽけなもしもの話で涙を流すんだろう


たかが身体の関係



愛なんて、存在してはいけない

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