souko (ページ10)

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【OP：キッド】ゆめふえる② ページ10

「次の島まで、大体5日程度っすよ」

航海士の見立てで明確になった期限。
こんなにも次の島までの時間が鬱々としたものになることはねえと言えるほど、それからの時間の流れは遅かった。

その間も、たまに見かけるAは常に誰かしらと談笑していやがって、今すぐにでも海に放り投げてやりたい気持ちに駆られる。

そもそもだ、なんでこんなに腹が立つ？
簡単な話じゃねえか。
オークション会場で(間接的に)助けてやって、七武海からも身を隠してやり、新世界まで乗せてきてやった。
やってやった事は沢山あるが、それを何も精算せずにあっさりと出ていこうとしやがる。

「それが気に食わねえ」
「ならそう本人に伝えたらいいじゃないか」
「それも癪だ」
「器が小さいと言われるだろうな」
「分かってんなら言うんじゃねえよ」

海賊船にタダ乗りはありえねえだろ。
そう同意を求めりゃ、キラーは今朝届いたばかりの新聞を捲りながら「違いないが...」と、言葉を濁す。

「なら、キッドは何を見返りに欲しいんだ？」

見返り...？
思わぬ返答に言葉が詰まる。
だが、考えてみりゃ当然の疑問だ。
それなのに、金さえ払えばいいのか、労働力なのか、自分に問いかけてもこれといってしっくりくる回答が出なかった。

押し黙る俺に、キラーは何も言わず、マスクの隙間からストローでコーヒーを飲み始めやがった。
完全に他人事だな、テメェ。

船に乗せてやった駄賃に、何を貰うのか。
答えが定まらねえまま、次の島までの日数は減っていく。
遂にそれが残すところ数時間となったとき、いつまでも悩んでる自分のらしくなさがストレスの限界を迎え、場当たり的に俺はAを呼んだ。

「なあに？」

俺と正反対に、ケロッとした態度が気に食わねえ。
ついでに言うと、船長である俺にこの数日挨拶もロクにしねえで、クルーとばかり遊んでやがったのも腹が立つ。

「テメェはどうしたい」

引き止めたいのか、放り出したいのか、殴りたいのか蹴りたいのか、もうよく分からねえ。
腹が立つのは事実だし、こいつを見てると何かが警鐘を鳴らしてんのは確かだった。

他人に決定権を譲るなんてことはそうそうしねえ。
だから、Aの行く末を気にする奴らがどよめくのも理解出来る。
が、今回ばかりは乗船を許可しても、下船を命じても、どっちも腹の虫が収まらねえうえに、それが自己責任になんのがどうにも許せなかった。

そしてなんで俺ばっかりこんな悩まなきゃなんねえんだ。