souko (ページ6)

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【OP：キッド】ゆめひろう② ページ6

どさくさに紛れて逃げ出すドレイ1歩手前人達に混ざって、私もオークション会場を後にする。
表の方では何やら海賊たちが海軍とやり合っているらしいから、そこから遠く離れるように逃げていた。

なんとか1番近くの橋を渡りきる、そんな時。

「おい、テメェ」

後ろから太くガラの悪い声に呼び止められ、肩が震えた。
あ、まずい。
警備員がまだいたのかもしれない。
でもよりによって、逃げた人たちの中で私を選ぶことないのに。

手錠で擦れた手首の傷を擦りながら、恐る恐る振り返る。
すると、橋の反対側に、声の主を見た。

燃えるような赤の髪。
鍛え抜かれた体と、パンクな出で立ち。

それは忘れようにもないほどのインパクトで、瞬時にあの日の夜に記憶が回帰する。

「...海賊王さん？」

クルーに橋を落として海兵共が追って来れねえようにしろと命令を出し、俺はそのまま歩を進めた。
驚きすぎて空いた口が塞がらねえその女が呼ぶ俺への呼称が、懐かしい上に愉快だった。

「昔名乗ったはずだぜ」

忘れるには十分な時間は経過してるが。
まだ手にしてねえ称号で呼ばれるのはむず痒い。
顔を顰めて女を見下ろせば、ああ、と素っ頓狂な返事が返ってくる。

「ユースタス“キャプテン“キッド」
「キッドでいい」
「お久しぶりです、キッドさん」

見ないうちに外見は女らしく成長しているが、中身はどうやらほとんど変わっちゃいねぇらしい。
今さっきまでドレイとしてオークションにかけられていたとは思えねえほどに、そいつの態度は飄々としていた。

「やはり知り合いだったのか」
「かなり前に2度だけな」
「おそらく今までの人生の中で、トータル3時間も一緒に居たことないけど」
「...それはほぼ他人だな」

他人だよとあっけらかんと答えつつ、女は今まさに崩れ落ちる橋を俺越しに見ている。
俺らにとっては追っ手の海軍も、こいつにとっては正義の味方だろう。
あまり長く接触していたら、海賊と間違われて面倒なことになる可能性がある。

「さっさと逃げんだな。俺たちといるのを海兵に見られたら厄介だろ」

俺にしては優しい物言いだ。
しかも内容が内容なだけあって、キラーからも、橋を壊し終えたクルーたちからも、信じられねえものを見るような眼差しを向けられてんのが分かる。
うるせえぞテメーら。

俺の(珍しすぎる)ヤサシサに、女は素直に頷きつつも、困ったように頭をかいた。

「それもそうなんだけど...」
「？」
「寧ろその方が今はありがたいというか...」