souko (ページ27)

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【OP：キッド】ゆめ…？⑧ ページ27

それから私たち2人は雨を避けられる場所を探して、更に島の中心へ向かった。
さっきの海賊たちは、去り際にキッドが鉄を曲げて捕縛していたから、たぶんもう追いかけては来ないだろう。

海水ではないけど濡れることがあまり好きでは無いキッドは、ようやく雨が凌げる場所を見つけると、水分を吸って重くなったコートを乱雑に投げ捨てる。

お高そうなのに、泥が着いちゃうよ。
もったいないとそれを手に取って水気を絞ろうとしたけど、あまりの重さと大きさに袖を絞るのだけでも一苦労だ。
見かねたキッドが奪い取るようにして外套を翻し、バッサバッサと水を飛ばした。

良かれと思ってやった事も無意味のように思えて、更に気持ちが沈んでいく。
あーあ、今日はほんと、朝からついてない。

文字が滲み始めたびしょ濡れの手帳を見下ろしていたら、不意に大きな掌が目の前に迫ってきていることに気が付いて、思わず後退りした。

ビクくつ私に、腕の持ち主であるキッドは眉根を寄せる。

「いつまでも呆けてねえで、テメェも脱げ」
「え、と…遠慮しておく」
「バカが」

遠慮するようなもんじゃないと言わんばかりに、彼は問答無用で私の服をひん剥いていく。
待って！こんなの良くないと思う！せっかくヒーローみたいだったのに！

どんなに嫌がっても力の差は歴然で、抵抗虚しくあっという間に下着のみにされ、色んな感情が爆発しそうになる。
さっきまで胸いっぱいにあった感謝とか、屈辱を晴らしてくれたスカッと感とか、全部どっかに飛んでいって、今は目の前のこの男こそ全ての敵だと思えたのに。

どさりと頭から外套が被せられて、その重みに思わず座り込んでしまった。

「テメェの服乾く方が先だろうがな、ねぇよりマシだろ」

(たぶんさっきの海賊団から巻き上げてきた服の切れ端とか)僅かに岩場にある枝を集めて、火打石かなにかで焚き火の準備をするキッド。
淡々と、文句も言わずに動く彼は、あえてなのかこちらに広い背中を向けていて。

「俺の故郷もスコールなんざしょっちゅうあった。いつまても濡れてると、その後の高熱の方が手が付けられなくなる」

まして船の薬も限られてるしなと。

ワンピースを夢見て、傲慢で、子供っぽくて、自分のやりたい事しかやらないような、そんな男だと思っていたのに。
新しい一面というか、意外なほどの冷静な面を見て、むしろ私の方が子供だったようだと反省した。

大人しく彼のコートにくるまって、ただ黙って、キッドのことを眺めていた。