souko (ページ25)

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【OP：キッド】ゆめ…？⑥ ページ25

「この女いろんな海賊の航海メモしてるぜ」
「海軍のもあんじゃねえか。これ海軍中将のこと...」
「やっぱテメェ怪しいなァ」

そんなもんお互い様だろう。
第一、グランドラインのこんな辺鄙な島にいる時点で、世間一般からはかけ離れているんだから。

「返して。それ私の小説のネタにするんだから」

他人には無価値でも、私にとっては何ものにも変え難いものだ。
手を差し出して返却を促したら、男たちが静止していることに気がついた。
そして弾かれたように笑い声が湧き上がる。

「ガッハッハッ！小説、小説だと？！」
「もっとマシな嘘つけねえのかよ！」

誰一人まともに取り合う気のない、下品な笑声。
腹が立つと言うより、ウンザリしてくる。
そりゃ、女ひとりでグランドラインに小説書くために乗り込んだ、なんて、本に興味のないような奴らにはジョークにもならないだろう。
そんなことは分かっているから、行く先でこうして笑われるのだってよくある事だ。

ただ、不快であることは変わらない。

「うるさいな！ホントのことだってば！」

笑い転げるクルーの一人からネタ帳を引ったくり、すっかり雨で濡れてしまった万年筆を拾う。

新世界を逆走なんて面白そうなことしてるから、話を聞きたかったけど、こいつらからはこれ以上ネタを引き出せそうにない。
未だやまない笑い声を背に、せっかく見つけた雨宿り出来る場所を後にしようとした時。

「どうせ金が欲しくて始めたんだろ？海賊に笑われる覚悟もねえのに海に出るんじゃねえよ！」

船長の一際大きい侮蔑にカチンときて。

「なんでそんな事あんたなんかに...！」

思わず握っていた万年筆を振り上げた。

一体私の何を知っているというんだ。
どうして他人に左右されなきゃいけない。
なぜ最初から出来っこないと決めつける。

今まで受け流してきた否定まで、芋ずる式に記憶の中から引っ張りだされた気がして、歯止めが聞かなかった。
でも、鋭いペン先は届くことはなく、振り払われた剛腕で軽々と平手打ちされた。
バチンと大きな音を立て、頭が大きく揺さぶられる。
すっかりぐちゃぐちゃな地面へ放り出された。

「大人しく慰め者になってた方が金が手に入るぜぇ？」

こんな時は、自分に対して1番腹が立つ。
独りで生きてきても、こういう時にやり返しも出来ないから。

そしてそれを認識しているからこそ、黙って嵐が過ぎ去るのを待つしかないのがなにより悔しい。

雨音をかき消す爆笑に反比例して、強く唇を噛んだ。