souko (ページ18)

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【OP：キッド】ゆめぼやけ④ ページ18

「へえ〜、ワンピース探してんだ？じゃあ海賊王狙いだ。頑張ってね」

軽々しく相手を応援したからなのか。
あるいはその言葉が、昔自分に向けられたもんと被ったのか。
理由は定かじゃねえが無性に虫の居所が悪くなって、偶然聞いたセリフをキッカケに、島へ着く度無意味な鬼ごっこを繰り返している。

自分でもウンザリしてんだ。
Aも同じだろう。
事実、なんとか俺の目を掻い潜って船を抜け出すなんてしょっちゅうある。

30人もクルーがいても、女だけは小さな個室を使っている。
(尻軽とはいえ)例に漏れずAも1番せめえ部屋を乗船のタイミングで分けてあるから、俺は無遠慮にAの部屋の扉を蹴り開けた。

もぬけの殻だと思っていたそこには、小さなベッドに顔から突っ伏したままのAが寝転がってやがった。
バブルガムのやつ、また抜け出したと勘違いしやがったな。
まあ、勘違いされるほど繰り返してるコイツが元凶だが。

「…乱暴だなあ」

ドアが激しく開いた音に反応したわりには、緩慢な動きで顔を上げるA。
居ねえもんだと思って入ってきたばかりに、話題も何もねえんだが。

「テメェがまた脱走したかと思ったんだよ。バブルガムが何度も呼んでんぞ」
「…だとしても蹴り開けることないのに」
「そりゃ普段の自分の行いを振り返るんだな」

凶悪だと噂されてると自負してるが、無意味に撒き散らしても、仲間にまでそれを発揮してるつもりもねえ。
理由があるから、相応にキレてるだけだ。

明かりのついてねえ部屋の中は、窓からの月明かりと、廊下から差し込む光源しかない。
輪郭がわかる程度のそこで、Aがデカいため息を着いたのがなんかムカついて、また口論を重ねる気かと睨みつければ。

「テメェ泣いてんのか」

チラリと見えた目尻が濡れているように感じた。
咄嗟にそれを手の甲で拭う仕草をするあたり、図星だろう。
なんでテメェが泣くんだ。
泣きてえのはむしろこっちだ。

毎度毎度上陸の度に神経を尖らせて、滅入ってんのは俺の方だと思いつつも、その涙の理由が本気で下船を望んでるのかと思わせる。

「やだなあ、そりゃ泣きたくもなるよー」
「…何でだよ」
「だって話しかけた人達が次々に鉄の餌食になってくんだもん」

少しお話しただけなのにさ、と。
少し？その少しの中で、どれだけテメーは相手を調子に乗らせんだ？

ワンピースを探してると聞きゃ、誰だろうと応援して。

俺の時も、たかがその程度の重みで放ったセリフだったのか。