souko (ページ14)

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【OP：キッド】ゆめふえる⑥ ページ14

逆に今更降りろと言われても、荷物の整理が間に合わないなんて思ってしまう。
…そういう事じゃないんだよね？きっと。

キラーが言うには、キッドは別れを惜しんでるけど、好きとかそう言うんじゃなくて…ってことだけど。
でもそんなの、本人に確かめなきゃ分からなくない？

「キッドさん」

他人が他人の心うちを決めるなんておこがましい。
そう思うから、私は彼の横から覗き込んだ。

不機嫌を絵に書いたような表情で、すっかり口角が下がってる船長さん。
言葉を選べって言われても、どう選ぶべきなのか基準が分からない。

「キッドさんて私のこと好きなの？」

とりあえず明確にしておきたい点を聞いてみることにした。
みるみるうちにまた青筋が立っていくのが見える。
うん、間違えた。

「どうやら本気で死にてえらしい」
「うん、ごめん。間違えた。え、でも残って欲しいんだよね？」
「まずはその口がきけねえようにしてやる。腕さえ無事なら本も書けんだろ」
「あ、あ、ごめんごめんほんと。喧嘩したい訳じゃなくて」

あれおっかしいな。
なんでこうも上手くいかないんだろう。

何を言っても怒らせてしまいそうで、次の言葉が発せない。
打つ手がなくなってしまってもごもごしていたら、ナイフに手をかけたままのキッドが唸るように言った。

「テメェのごめんは紙くず同然の軽さなんだよ」
「…ごめん」
「ヘラヘラしやがって。船に乗せてやったのは俺だろうが。テメーの夢を拾ってやったのも俺だぜ、分かってんのか」
「うん…うん？」

途端に流暢に回り始めた口。
愚痴や責め立てるだけではなく、そこに自分への恩義の足らなさの指摘まで入ってきて、随分高いところにある彼の顔を見上げる。

こっちを向いてはないけど、苛立ちはしっかり眉間のシワに刻み込まれていた。

「それに今更この船を降りてどこに行くってんだ？」
「…うーん、まあ行き当たりばっ」
「そんなんだから人攫いに遭ったんだろうが」
「…」

あれ、なんか説教になってきた？

くどくどと降ってくる嫌味にも似た言葉にウンザリしそうになるけど、私の安全を思って言ってくれてるんだから、やっぱりこの男は根っこまで腐ってないんだろうな。

「テメェの夢拾ってやったんだ。テメェも俺の夢の片棒担ぎやがれ」
「…うん？それってつまり」

ようやく絡んだ赤い瞳。
燃えるような鮮やかなそれは真っ直ぐ私を射抜いて。

「なんだやっぱり私の事大好きじゃん」

言い切るや否や、船中の鉄が飛んだのだった。