souko (ページ13)

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【OP：キッド】ゆめふえる⑤ ページ13

どう答えても俺の責任になりそうだから、何も答えないに限る。
早々に口を噤んだ俺に、Aは更に口を尖らせた。

「人に指示されたら、そうするのか？」

どうやっても決定権を握りたがらないAにそう問えば、少し悩ましげに眉を寄せて唸り始めた。
すっかり部屋はとっちらかったが、ヒートやワイヤーたちの苦労によって、だいぶ元に戻ってきている。

怪我した奴らもいるにはいるが、キッドが仲間に直接手を下すことは有り得ない。
単純に、逃げそびれて転んだ打撲とか、そんなもんがほとんどだ。
Aに関して言えば、驚きすぎて傍のグラスを倒し、割れたガラスで腕を切った、というもの。

あれだけ散弾した鉄食器や武器は、綺麗に人間を避けて壁や床に刺さっているから、その程度にはキッドも自我が残っていたらしい。

「どっちだろうと、モジモジの実が見つかる確率は変わらないかなって」
「…この船に残りたいと思う気持ちはあるのか？」
「乗り心地は過去最高だったよ。あとみんなと仲良くもなれたし、そういう意味では名残惜しいけど」
「キッドは」
「うん？」

端的すぎる質問では意図が汲み取れなかったらしい。
だから、あえて丁寧に聞いてやることにした。

「お前はキッドの知り合いだろう。そのキッドと、この後どうしたいんだ？」

キッドと離れるのは名残惜しいのか。
そこまで付け加えてようやく、Aは話の本題…というか、論点に気がついたようだった。

「え、まさか本気でキッドさんが惜しんでいるとでも？」
「…」
「非戦闘員だよ？文字書くくらいしか出来ないけど？海賊船に絶対要らなくない？」
「…」
「…困ったな」

俺の無言をどう捉えたのか知らねえが、ようやく本気で悩み始めたのか、Aは腕組みしてうんうん唸り始めた。
かと思えば、すぐに顔を上げて真面目な顔で俺を見つめ、

「まさか本気で私の事好きなの？」

これまた愉快な程にストレートな疑問をぶつけて来やがる。
思わずどころか、盛大なため息をついてやって、俺は頭を抱えた。

「飛躍しすぎだバカヤロウ。いいからさっさとキッドと話してこい。今度は作家の端くれらしく、ちゃんと言葉を選んで」

どうにかしてくれこの荷物。
ただの積荷の方がよっぽどマシだと嘆きつつ、俺はAの首根っこを持ったまま部屋の外へ追い出した。

甲板に出ると、船は次の島を眼前に捉えていた。
ほとんどのクルーが室内で片付けをしている中、その人物は分厚いコートを翻して佇んでいる。