souko (ページ2)

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【OP：キッド】ゆめかたる② ページ2

敵意を含んだ眼差しに変わり、私の返答を待っている。
なんだ、分かりやすい男じゃないか。

見た目に引っ張られそうになるけど、予想より単純で純粋な一面を持ってると気づき、肩肘の張りが緩む。

「笑わないよ」

それが本当に笑わないという返答なのか、あるいは彼の機嫌を損ねないために答えたものなのか。
本人にとってはどうでも良かったようで、ただ静かに私から視線を酒へ移動させただけで終わった。

「お兄さん海賊なんだね」

なんとなく、会話を終えたくなくて今度はこちらから口を開けば、まさか話が続いていくとは思っていなかっただろう彼の酒へ伸ばす手が、ピクリとしたのが見えた。

「ワンピースって、どんなお宝だと思う？」
「…」
「ひとつなぎの大秘宝なんて、とてもロマンが溢れてる名前だよね」

ひとつなぎってどういう意味だろう？
グランドラインに秘宝があるって話だから、そこからついたのかな？
宝を見つけたらどうするの？

何一つ返答が来ないけど、怒ってる様子もないし、黙ると足元から呻き声が聞こえて嫌だしで、少なくとも手元のカクテルを飲み終えるまでは質問してみようと思ってた。

「海賊王って…」
「ぎゃあああ！」

最後にグラスに残ったチェリーを摘み、男へ視軸を投げた時。
体の左側から何かが覆いかぶさろうとしていることに気付いた。

けど、その次に瞬きした時には野太い悲鳴と、ガターンと椅子とかテーブルが転がる大きな音がして。
振り返ったら見知らぬ大人が泡吹いて倒れているし、カウンターの彼は何食わぬ顔で“なにか“を投げた後のフォームをしているし。

「…まさか、助けてくれたの？」

そこまで優しいとは思わなかったけど。
ビックリして思わず問えば、“助ける”なんてワードが気に食わなかったようで、ムッとした顔つきになる。

「ああ、うんごめん。ありがとう」

分かりやすいな。
いい人ぶる…というか、きっといい人じゃないんだろうけど、そういうつもりはないと。
でも咄嗟に手を出す程度には、どうやら私は彼の庇護欲を煽ったらしい。

宙ぶらりんのチェリーをまたグラスに返して、埃っぽい服を手で叩く。
カウンターから降りたとき、彼の視線を受けていることに気がついた。

「ひとり酒のお邪魔しました。頑張ってね海賊王」

ヒラヒラ手を振って、転がる大人たちを踏まないように…進めないからもう踏んじゃえ。
なんとか入口まで辿り着いたころには、この出来事をどう文章にしようかということに頭が動き始めていた。