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涙の跡も乾いた頃、近くの岸にカヌーが寄せられた音が聴こえて振り返った。
カヌーから陸へ上がったのは龍水で、その手にはこの時代にそぐわない四つ羽の機械と、大きなコントローラーが。
不思議そうにそれを見る私へ迷わず歩み寄ってくる彼は、無遠慮にすぐ隣へ腰を落とした。
背負っていた大きな箱はバッテリーのようで、腰に固定されているコントローラーに配線が繋がっている。
「フゥン。テティス、こんなところにいたのか」
ニヒルな笑みを浮かべ、彼は4つあるうちの１つの羽を指先でグルリと回した。
「見ろ。千空とカセキが作ったドローンだ」
「…飛ぶの？」
「愚問だな！あの二人が作ったんだぞ？その上操縦士は俺だ」
「飛ばんわけがない」と胸を張る龍水との距離感が近くて、何だかおかしくなってしまう。
自信たっぷりな彼の言い草に思わず苦笑を零したら、それを目ざとく拾った彼が高らかにフィンガースナップを鳴らした。
「洞窟の中である程度動かすことはできたが、実戦は野外だからな。風がある場所でも練習する必要がある」
そう言って4つのボリュームのみでできたコントロールをガチャガチャ忙しなく動かし、動きがまだまだぎこちないドローンを操縦し始めた。
彼の自信はお飾りではなくて、たしかに安定したホバリングを見せてくれている。
多少風が吹いてもすぐに体勢を立て直すそれはまるで生き物のよう。
器用に動く指先と、集中ゆえに尖っていく唇。
ゲーム機を与えられた子供のようだと思った。
「やはり千空と喧嘩したようだな」
彼の全神経が空へ向いていると思っていたのに、唐突に向けられた言葉に驚いた。
思わず彼の方へ顔を向けるけれど、目線は噛み合わない。
「拳銃を作った件もだが、貴様のことだ、記憶がないこと自体も引目に感じているんだろう。違うか？」
そして的を得たセリフに、自然と顔が歪む。
「…あなたは遠慮がないね」
「はっはー！遠慮などしてどうする？この程度で貴様らが破局するならば、とっくに俺が貴様を貰っている」
「…」
ずいぶんなお言葉ですこと。
なんとも言い難い気持ちになって顔を背ける。
3700年前よりもモーター音のうるさいドローンが、そんな私を嘲笑うように頭上で旋回し始めた。
「テティスは優しすぎる。それに付け入る千空も悪いがな」
「…」
それは逆なんじゃないだろうかと思ったけれど、黙って耳を傾けた。
綺麗な弧を描くドローンの動きが、何だか懐かしく思える。
あんまり記憶にない物なのに。
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sora(プロフ) - カルーアさん» とても長い作品になってしまいましたが、終わりを惜しんでいただけて感無量です。なかなか世の中が落ち着きませんが、カルーアさんもお気をつけてお過ごしくださいませ。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2020年12月28日 23時) (
レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - カルーアさん» ご感想ありがとうございます。どんなに色んなものがなくなっても、人間の根底はそう変わらないと私は思っています。彼が好きだからというよりも、彼女のどこまでも人間らしい気持ちが、何より裏切りたくないという誠実につながるのではと考えました。なんだかんだで→ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
カルーア(プロフ) - この世の中コロナも変異種が出たりと不安が多いですし、soraさんも体調には気をつけてどうかお過ごしください。続編も楽しみにしています。 (2020年12月28日 9時) (レス) id: 0fc594eb2a (このIDを非表示/違反報告)
カルーア(プロフ) - 人生青史�ゴ扱襪�めでとうございます。夢主ちゃんは記憶が無い中で本の中の自分とその自分が愛している千空を信じ続ける姿に心打たれます。もうすぐ終わりということでとても寂しく思いますが、最後まで心より応援させていただきます。 (2020年12月28日 8時) (レス) id: 0fc594eb2a (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 坂田銀糖さん» 書き込みありがとうございます。本当は毎日更新をまたしたいのですが、なにぶん気分の上下が激しく…できる時にまとめて更新になってしまい申し訳ありません。後少しで彼女と彼の関係も変わるかと思います。もう少しこのまま読み進めてください。よろしくお願いします。 (2020年12月27日 21時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年10月21日 9時
