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「Aちゃんは直せないの？」
銅線一本でぶら下がっているレーダーのレンズを手に取れば、音もせず寄ってきたイバラが耳元で囁いてきた。
あまりの近さと驚きで身を引けば、また、あの悪魔のような笑みで見下ろされているのに気づく。
ぶわりと、嫌な汗がふき出た。
「…直せません。私は技術者じゃないので」
「ああ、そっか。アルケミスト…いや、ケンジャなんだっけ？」
「…」
「残念だね〜〜直せたら頭首様もお喜びだったのに」
全く残念そうに見えない、歪んだ笑み。
きっと今、私を試したんだ。
上納品をここまで破壊するなんて、普通は絶対にしない。
たしかに彼らにとっては未知のものだろうけれど、これは使い方を調べて壊れたんじゃなくて、意図的に壊されている。
…分からないものが、怖いから。
緊張で指先が冷えていくのが分かる。
強く自分史を胸に抱いて、少しイバラから距離をとった。
この男はとても慎重だ。
自分の理解の範疇にないから『分からない部分だけ』破壊した。
自分の手に負えないと判断したから。
もしここで直せると答えたら、おそらく私も、この船と同じ道を辿っただろう。
イバラにとって危険な知識…この島よりも遥か上をいく文明を知る者だから。
ここで頭首の次に力を持つ男が、生かしておくメリットなんてほとんどない。
だからこそ、この男に賢者と呼ばれたことが私の背筋を凍らせた。
私に価値を見出させる？
むしろ自分で自分の足場を削った気しかしない…！
何も知らない馬鹿な女でも演じていれば、もしかしたら…
ただの帆船になったペルセウスなら、もう私は不要だ。
マズい…この世界にない科学という切り札を担保に動こうと思ってたのに…っ
「開いて確かめないってことは、その本にも直し方書いてないってことでしょ？じゃあもうこれは大きな船として使うしかないね。幸い帆は似てるし」
「船以外だって、あなたが知らないことはたくさん…」
「あ〜〜ダメダメ！むしろ色んなこと知ってる方が危険じゃない」
長い爪が私の顎を掴み上げる。
無理やり上を向かされ、淀んだ瞳と視線を合わせざるをえなくなって、怖い。
「記憶を取り戻したいって言うけどね〜おじちゃん的にはメリットが少ないの。Aちゃんを助けて何か良いことある？」
船だって帆があれば動かせる。
ここにある訳分からないものは、正直今までの生活で十分だったからなくても困らない。
これ以上、何を提示されようと、よっぽどじゃないと。
「価値、ナシ」
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sora(プロフ) - 北さん» いるように、きっと強い重力が働いているのではないでしょうか。そういう2人であって欲しいと私は思っています。原作自体一人ひとりの魅力が強い漫画ですので、彼女も同じように恒星になれたら嬉しいです。応援ありがとうございます。北さんもお体ご自愛ください。 (2020年8月30日 15時) (
レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 北さん» いつも書き込みありがとうございます。彼女も少しずつ成長をしているのかもしれません。記憶がないからこそ自分の二本足でしっかりと立ち、自分のいく末を選択するんだと思います。でも潜在意識というものが人にはあるとも思っていて、生涯のパートナーを直感で選ぶ人が (2020年8月30日 15時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - また心から笑い合える日を待っています。これからも応援しています。無理のない程度に頑張って下さい。長文失礼致しました (2020年8月30日 15時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - もしれません。もし私が彼女の立場であったら、簡単に千空を信じられないでしょうし、自ら行動なんて起こせないでしょう。sora様の描写の素晴らしさもあってか、いつもより強く感じます。素敵です。けれど、やはり記憶が戻って欲しいのもまた事実。千空と愛史ちゃんが (2020年8月30日 15時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 完結お疲れ様です。実を言えば記憶のある愛史ちゃんよりも記憶のない愛史ちゃんの方が好きだったりします（勿論どちらも好きですが）惚れたと言いましょうか、、、。自分の記憶がないのにも関わらずいつも通り、いや、それ以上に真っ直ぐで頭の良い彼女に憧れているのか (2020年8月30日 15時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年8月2日 17時
