06 ページ6
「と…とにかく早く帰りなさい！二度とこの付近で逢引なんかしないで！」
ご都合よく誤解してくださった女戦士…キリサメは、顔を真っ赤にさせて再びペルセウスの方へ向かって行った。
なんとかこの場を凌げたのは良かったが、一度顔を見られたのが後々面倒にならなきゃ良い。
「ククク。んな三文芝居も船内に生き残りがいねえなら意味もねえがな」
「ああ、分かっている」
超絶純情少年のソユーズはいつまでも赤面してこっちをチラチラ見てきやがる。
鬱陶しいぞ良い加減。
そうしむけたメンタリストは既になにもなかったように普段通りに戻ってんのも癪だ。
テメーAがいなけりゃいねえで面倒だな。
思い切りゲンの足を踏んづけてやった。
「いった！」
「けしかけすぎだエセマジシャン」
「えええドイヒー俺のおかげでみんな無事なのに〜」
「うるせえ。俺だって聖人君主じゃねえぞ」
事が落ち着いたら覚えてろよテメー。
そんな気持ちを込めてニヤリと笑ってやれば、ゲンの顔がひくつく。
「誰だ？！」
言い訳を並べ立てようとしたゲンだったが、それより先にコハクの声が響く。
今度は何事だと全員が振り返った先に見えたのは、コハクが女を1人、地面に押し付けるように拘束している姿だった。
着ている服から察するに、さっきのキリサメと同じ、この島の住人みてえだ。
まさかキリサメ以外にも見つかっていたとは思わなかった。
両腕を羽交い締めにされている女が、何も武器を持っていないか確認するため目線を走らせる。
「今度はなに〜も〜」
「お、女の子だ」
見慣れねえドレス。
見慣れねえ石の靴。
だが、その腰に巻かれたそれを見た瞬間、意識しねえと呼吸が難しくなった。
「…コハク、どきやがれ」
うつ伏せに拘束しているから、髪が垂れて顔が見えねえ。
だが、ドレスに似つかわしくねえ皮袋は、何度も何度も目にした事がある。
「しかし、それでは…」
「良いからどけ」
危険ではないかと目線で語ってくるが、危険なはずがなかった。
生っ白い細腕。
インクが染み付いた指先。
そんな形容詞、たった1人しか思い浮かばねえ。
コハクが退いて、ゆっくり体を起こすそいつの前に膝をつく。
乱れた髪へゆっくり手を伸ばしたら、びくりと肩が震えたのが分かったが、そのまま気にせず黒髪を耳にかけてやった。
押さえつけられて頬についた土を払いながらも、まっすぐ俺を見上げてくるそれ。
本来なら船内で石化して、石色になっているはずだった、あの、黒曜石だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 216人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sora(プロフ) - 北さん» そして、この小説をきっかけにアニメだけではなく、原作まで手を伸ばしていただけたこと本当に嬉しいです。原作の彼らが大好き過ぎてできた作品なので、是非本編を片手に読み進めていただけると幸いです。宝島編はまだ続きますが、最後までよろしくお願いします。 (2020年8月2日 16時) (
レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 北さん» いつもご感想ありがとうございます。小さな手がかりからでも誕生日を当てられるくらい、彼も彼女のとの些細な日常を大切にしていると思います。いつも静かに寄り添ってくれていたからこそ、真正面からぶつかるのは、彼自身ドキドキしたかと思いますが。→ (2020年8月2日 16時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 実は私、アニメ民でほとんど内容を知らなかったんです。けれど、この小説を本当に楽しく読みたいと思い、漫画も読み始めてしまいました。（ついでに星の息も読み返してしまい追いつくのが大変でしたが）。これからも無理のない程度に頑張って下さい。楽しみにしています (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 千空が誕生日を当てたとき、なんてヤバイやつなんだ…と心から尊敬しました（一個前の作品と続けて読んだためこの章じゃないかもしれませんが）。本当にsora様の書くお話が好きでたまりません (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 完結お疲れ様です。お疲れ様でした。本当…もう…素敵でした…。私の語彙力では言い表せませんが、とにかく読んでいて幸せでした。愛史ちゃんの記憶が消えてしまってとても悲しいですが、記憶がなくなってもなお、千空を信用していてなんだかきゅんきゅんします。 (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sora
| 作成日時：2020年7月19日 22時
