32 ページ32
「さあ次はあなたよ」
「え」
コハクを立派に変身させられて自信を持ったのか、アマリリスが私を振り返って腕を絡めてきた。
「あ？Aは別にいいだろ」
「良くないでしょ。人数が多い方がいいって言ったじゃない」
眉根を寄せる石神千空がちらりと私をみた。
言いたいことは分かりますけれどね。
闘える女子が欲しいわけであって、私は(たぶん)戦闘なんて無理だ。
むしろ足でまといになるとか思ってるんだろうな。
…あれ、私ほんとにこの男に好かれてる…んだよね？
どうにも合理的すぎる理由で渋られている気がして、あんまりいい気はしない。
けれど彼はアマリリスの言葉に反論せず、肩をすくめるのみに収めた。
勝手にしろということらしい。
戦闘は出来なくても、弾が多いに越したことはない、ということだろうか。
アマリリスに手を引かれ、さきほどコハクが座っていた場所に今度は私が座る。
人にシャンプーをしてもらうのはなんだか恥ずかしかったので、そこは自分でやったけれど。
さっぱりとした頭皮に気分が上がっているうちに、アマリリスが化粧品を選び始めた。
「Aちゃんは可愛いのも美人なのも出来そうだけど、あんまり笑わないから知的美人がいいかもね」
知的美人って…誰のことだろう。
「ピンクとかより青系かな？目じりだけ流れるように描いて、口紅は…」
他人にこんな無防備な顔を晒すのはとても居心地が悪い。
目線のやり場に困るし、手持ち無沙汰な手をどうすればいいかも分からない。
綺麗に揃えた膝の上で強く拳を握り、やけに楽しそうな眼差しでメイクをしてくれるアマリリスから視線を逃がせば、ラボカーの傍で胡座をかいて座る彼が見えた。
一瞬目線が交わった気がしたけれど、私の方が咄嗟に目をつぶってしまう。
「あ！動かないで！」
「ご、ごめんなさい」
そして怒られた…
「今のドレスも可愛いけど、メイクに合わせるならもっとシックな色合いのがいいかもねー」
「待ってて」と一言残し、アマリリスがカヌーへ歩いていく。
コハクに着せる用のドレスを何着か運んできたのだろう。
その中からしばらく物色したあと、彼女が嬉々とした様子で戻ってきた。
あれよあれよと背中を押されて岩陰で着替えさせられる。
(軽い風にも揺れる生地は変わらないけれど)胸の下で切り返しのあるストレートなワンピースタイプの裾がゆらゆら靡く。
薄い生地だから透けてないか不安だ。
肩だって丸出しだし…なにより…
私は自分の太ももを見下ろした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 216人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sora(プロフ) - 北さん» そして、この小説をきっかけにアニメだけではなく、原作まで手を伸ばしていただけたこと本当に嬉しいです。原作の彼らが大好き過ぎてできた作品なので、是非本編を片手に読み進めていただけると幸いです。宝島編はまだ続きますが、最後までよろしくお願いします。 (2020年8月2日 16時) (
レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 北さん» いつもご感想ありがとうございます。小さな手がかりからでも誕生日を当てられるくらい、彼も彼女のとの些細な日常を大切にしていると思います。いつも静かに寄り添ってくれていたからこそ、真正面からぶつかるのは、彼自身ドキドキしたかと思いますが。→ (2020年8月2日 16時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 実は私、アニメ民でほとんど内容を知らなかったんです。けれど、この小説を本当に楽しく読みたいと思い、漫画も読み始めてしまいました。（ついでに星の息も読み返してしまい追いつくのが大変でしたが）。これからも無理のない程度に頑張って下さい。楽しみにしています (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 千空が誕生日を当てたとき、なんてヤバイやつなんだ…と心から尊敬しました（一個前の作品と続けて読んだためこの章じゃないかもしれませんが）。本当にsora様の書くお話が好きでたまりません (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
北(プロフ) - 完結お疲れ様です。お疲れ様でした。本当…もう…素敵でした…。私の語彙力では言い表せませんが、とにかく読んでいて幸せでした。愛史ちゃんの記憶が消えてしまってとても悲しいですが、記憶がなくなってもなお、千空を信用していてなんだかきゅんきゅんします。 (2020年8月2日 0時) (レス) id: c788d63342 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sora
| 作成日時：2020年7月19日 22時
