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(真意はともかく)モズに無理やり着せられたこのドレスが、後宮仕えの人間と錯覚させたのだろう。
すんなりと私とモズを通した男たちからの視線はまだ拭えないけれど、とりあえず機帆船に乗り込むことが出来そうだ。
「モズ、下ろして」
「いいけどさ、あんまうろちょろすると危ないよ」
ちらりと周囲に視線を流した彼は、近くにいた見張りの男にテキトーに声をかける。
「キリサメちゃんたちは？」
「宰相を呼びに」
「んー？俺と一緒に出てきたはずだけど」
「何でも用を思い出されたとか…」
「…ふーん」
終始、余裕のある笑顔で対応しつつも、最後の一言を聞いた瞬間だけモズの眉がぴくりと動いたのを見逃さなかった。
何か思うところがある相手なのだろう。
宰相ということは、おそらくこの島で随一の切れ者のはずだ。
最初に言っていたモズの上司…なのかな。
ようやく自由になった足でコルウスを登り切ったとき、私は思わず息を飲んだ。
「な、…」
視界にとらえたのは広いデッキだけではなく、あまりに躍動感がある数多の石像だった。
驚きと恐怖、肉薄した表情と、細部まで彫り込まれたそれは、一見人間と見まごうほどの出来で、本当に私はこの船に乗っていたのだろうか？とあまりの悪趣味に顔をしかめる。
「知った顔でもいた？」
それを見逃さないモズがニヤニヤ笑いながら言うけれど、私の絶句した理由はそういうことではない。
単純に、薄気味悪かった。
立って弓矢を上空に構えるもの、倒れて手首から先が折れてしまったもの、女も男も老人も、共通して言えるのは視線が上を向いていること。
時間を切り取ったみたい…
不気味な光景に肩を抱けば、モズは無言のまま船内へ入って行こうとする。
私も慌ててその跡を追い、重たい鉄製の扉の中へと足を踏み入れた。
外側だけではなく、中も良くできている。
急勾配な階段に、履きなれない石の靴は辛いけれど、何とか降り切ったところで寝室らしき部屋を見つけた。
警戒もせずにモズは扉を開ける。
中を覗けば、予想通り、蚕棚のように重なった5段ベッドが詰まっている。
生活感はあまりなく、物も少ない。
ふと、その中の一つだけ、布団がよれているのが見えた。
ちらりとモズに目配せすれば、彼は興味がないようにあくびを零し、さっさと部屋を出て行こうとしていた。
その一瞬の隙をついて、布団の枕元に置いてあった小さな本を服を入れている籠の中に忍ばせる。
きっと船長室ではないから航海日誌ではないだろうけれど…
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sora(プロフ) - 雪姫さん» お返事が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。お体が快復に向かっているようで安心しました。休み休みで良いので、雪姫さんなりのテンポで歩めればいいと思います。今は物語を書く時間が取れず筆が進められないので、のんびり読んでいただければ幸いです。 (2022年1月14日 23時) (
レス) id: a1dae06abc (このIDを非表示/違反報告)
雪姫(プロフ) - 何度も何度も泣きました。どうしようもなく彼女達が好きで、彼女達のことを応援しているからこそ、辛くても見届けたいなと思っています。精神的なもので完治はまだ難しいのですが、また彼女達の歴史を覗けるのがたまらなく嬉しいです。ずっと応援しています。 (2021年7月13日 13時) (レス) id: 10ca58f2a4 (このIDを非表示/違反報告)
雪姫(プロフ) - お久しぶりです。雪姫です。先日病気の関係で、文章を追うのが難しくなってしまったとコメントさせていただきましたが、少しずつ快復し、今また読み進めています。ようやくこの日が来たのかと思っています。物語の続きを読んだこと、彼女の記憶のこと。読みながら、→ (2021年7月13日 13時) (レス) id: 10ca58f2a4 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - カルーアさん» ご感想ありがとうございます。ここから彼女と彼の本当の意味での絆を描いていきたいと思っています。ずっと温めていたので、怒涛の更新になるかと思いますが、どうぞこれからもよろしくお願いします。 (2020年7月19日 22時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
カルーア(プロフ) - 人類青史�ヾ扱襪�めでとうございます。ついに全てを忘れてしまいましたね…。忘れても尚千空をそして記憶を忘れる前の自分を思い、泣く主人公に読んでいるだけで胸が張り裂けそうです。�△發箸討盂擇靴澆任后９洪郡萃イ辰討�ださい。 (2020年7月19日 20時) (レス) id: 0fc594eb2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年7月11日 15時
