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真先に千空へ駆け寄ったのは、濡れ鼠のなかでも一番ひ弱だからだ。
(ふ、夫婦だからとか…そういう理由がなかったわけではないけれど)
あくまで合理的に対応する私を、龍水の深い茶色の瞳が見下ろしてくる。
すっと伸びてきた彼の腕に気がついて、慌てて距離を取った。
「…フゥン。A、お前がいつも言っていた男…それこそがこの石神千空だった。違うか？」
私へ伸ばしかけた腕をバチンと鳴らせて、いつものように笑う龍水。
洞窟に雨宿りしていた全員の視線が再び私たちに向いた。
お願いだから、この大人数の前でそういう話はやめて欲しいのだけれど。
「なんの話？いつも話してたって…結局Aちゃんと龍水ちゃんはどういう関係なの？」
嬉々として首を突っ込んでくるゲン。
そうやって野次馬根性見せる人たちが出てくるから嫌だったのに…私は諦めて大きく息をつく。
説明のために口を開こうとしたとき、私の声を遮って、龍水の声が洞窟内に響く。
「Aと俺は、許嫁だ」
龍水の発言に、しーんと…いや、正確には、外の大雨と風の音だけがうるさいほど聞こえる空間が出来あがった。
ぽかんと口を開けたみんなの反応を見て、私は口の端から魂が抜けていく気持ちを味わう。
千空からの視線を背中に感じる。
いや、ほんとうに、いい加減にしろこの強欲男…！
私は言葉を続けようとする龍水の耳を思い切り引っ張った。
「語弊をうむ発言はしないでほしいのだけれど！」
「はっはー！どこに偽りがある？」
「あるでしょう！婚約なんてしてない！」
「あはは。落ち着いてA。ちょっと詳しく聞かせてよ」
私と龍水を引き離した羽京。
彼の無邪気な笑顔は見慣れたはずなのに、龍水へ向ける眼差しが少し厳しく感じる。
「貴様らはAの本当の苗字を知らんのか」
「…本当の苗字？」
「つーかよ俺はAにも苗字があるなんて知らなかったぜ」
クロムの的外れな発言はいいとして、千空がようやくにして発した言葉に、肩がびくりと反応してしまった。
その話、したくないのだけれど。
それでも、もうここまできてしまったら言うしかあるまい。
不服ではあるけれど、私は額に手をあて、頭痛を堪えながらことの次第を話すことにした。
Aの苗字はAだ。
だが、それは父方の姓であって、母方の姓が七海だと言う。
そう、そして言わずもがな、それはこの七海龍水と同じく七海財閥のそれだ。
「お母さんが嫁いだのだから、旧姓だよ」
疲れたように言うA。
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sora(プロフ) - さやなぎひまりさん» ご感想ありがとうございます。Dr.STONEから初めて知ったバンドでしたが、とても綺麗でどの曲も彼らに合っていて、少しでも多くの人にその世界観を感じてもらえたらと思っています。共感いただけて嬉しいです。まだ先は長いですが最後までよろしくお願いします。 (2020年7月10日 10時) (
レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
さやなぎひまり(プロフ) - 私がアプリでちまちま読んでやっと追いついたところなのですが、作者様が文学と青春を歌うあのバンドをいかに大事になさっているのかが良く伝わってきました。たしかにあのフレーズは彼を思い出させますよね、大いに共感しました。 (2020年7月10日 9時) (レス) id: 1c54ce4927 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 雪姫さん» 書き込みありがとうございます。宜候！素敵な歌で好きです。受験生ということで日々大変かと思いますが、遠くから応援しています。変わらず更新し続けていきますので気長に追いかけていただければ幸いです。2人の関係の変化をこれからも楽しんでいってください。 (2020年3月1日 23時) (レス) id: 1d20492120 (このIDを非表示/違反報告)
雪姫(プロフ) - やっぱり黒曜石可愛いです......!!!!千空と龍水に虐められて拗ねちゃう姿が年相応で微笑ましくなります。続きが気になります......!!!!!! (2020年3月1日 23時) (レス) id: 10ca58f2a4 (このIDを非表示/違反報告)
雪姫(プロフ) - 宜候！端々の芸が細かくてついつい笑ってしまいます。受験生なため、勉強食事睡眠に一日を費やしていて更新を追えない状態ですが今でも楽しみにしています。早く最新話に追いつきたいです。 (2020年3月1日 23時) (レス) id: 10ca58f2a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年2月9日 23時
