検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:29,667 hit

8.3話 ページ48

自分の将来を決められる。


それはどんなに辛いことか。

今まで紅葉野くんは、塾も学校も習い事も、

全てお母さんが選んでいたらしい。

一見それは楽なことに見える。


でも、その逆に、

自分の好きなこと、興味を持ったことを

やらせてはくれなかったということだろう。


紅葉野くんはずっと、縛られ続けていたんだ。



シーソーを渡りきり、

静かにブランコへと体を預ける。

私も隣のブランコに乗り、

少しだけゆらゆらと足で動かす。



A「紅葉野くんは将来何になりたいの?」

秋「え?」



ただのなんでもない子供の頃によく聞かれた

「将来の夢」という問い。



秋「そうだな。俺は保育士になりたい……かな。
子供が好きで………変、だよね。
こんな身長ばかり大きい奴が保育士って」



あははと困ったような照れ隠しのような

笑いをする紅葉野くん。


私はブランコから降り、紅葉野くんに向き直る。



A「全然変じゃないよ」



またも月明かりが現れ、

紅葉野くんの瞳を綺麗に映す。



A「私からしたらすごく羨ましい。
………実はね、私。将来の夢がないの」



ブランコから離れ、向かいにある砂場へと進む。



A「昔っからそうなんだけど。
私、何かに興味を持ったことが
あまりなくて。
自分が何になりたいのかすらも
分からないんだ」



誰かが置いていったのであろう

小さなおもちゃのスコップで、山を作る。

砂山に木の棒を立て、周りの砂を取っていく。



A「小さい頃はただ周りに合わせようと
頑張った。
当時流行ってたキャラのグッズを
集めてみたり、ピアノを
やってみたり……でも、すぐに飽きた」



やがて棒の周りの砂はなくなり、

ぽてっと静かに倒れた。


興味を持たないことは

何も得られないことと同然で、

こんな私でも好きになるものがあるだろうと、

その時はただ必死に「何か」を追い求めた。


けれど、それは手に入ってもすぐに

落ちてしまいなくなってしまう。


違うクラスになるにつれ、

最初は話しかけてくれる子もいた。


こんな私だ。


その子たちはすぐに私の元を去っていった。

小学校から中学1年まで当然、

私は友達すらできなかった。



A「何も興味を持たなかった私でも、
高校に上がってケータイを
持ってから一つだけ、
今でも続いてることがあるんだ」



私はそう言ってポケットから

ケータイを取り出し、画面を操作する。



秋「それって……」

8.4話→←8.2話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (25 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
26人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , イケメン王子 , 夢小説   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

リト(プロフ) - ここまで読んでくださった読者様、本当にありがとうございます!第2作もありますのでよろしくお願いします!! (2020年4月25日 1時) (レス) id: 96d4802982 (このIDを非表示/違反報告)
リト(プロフ) - お気に入り登録者が増えてる! (2020年2月26日 19時) (レス) id: 96d4802982 (このIDを非表示/違反報告)
リト(プロフ) - 表紙描きました! (2020年2月17日 22時) (レス) id: 96d4802982 (このIDを非表示/違反報告)
リト(プロフ) - 今回の話はあなたの(設定された)過去があります。私も主人公と重なる部分がありますね。私の場合、将来何になりたいかですかね。まだ確実には決まっていないんですよ。皆さんはどうですかね? (2020年2月7日 23時) (レス) id: 96d4802982 (このIDを非表示/違反報告)
リト(プロフ) - びびちゃんさん» こんな作品を面白いなんてっ(泣)ありがとうございます!更新頑張れます!! (2020年2月5日 23時) (レス) id: 96d4802982 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:リト | 作成日時:2018年12月2日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。