角砂糖が溶けないうちに。② (ページ2)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:6,865 hit

愛の毒 - Drums ページ2

「じゃ、行ってくるね」

「おう、行ってらっしゃい。気をつけてな～」

満面の笑みで彼女を送り出す。

昔の学校の集まりで久々に集合し、
みんなで夜ご飯を食べに行くらしい。

大人ぶって余裕そうに気をつけてな～
なんて言った俺だが、

正直行かないで欲しかった。

俺自身の盲目さ、というのもあるのかもしれないが
彼女はとっても可愛い。

見た目はもちろん、中身もだ。

俺だけに見せる女の子らしさとか
繊細な部分とか

全てが愛おしくて堪らない。

他の男に見せたくない。

普段はメンバー内でも最年長～などと言って
大人の余裕を見せている俺だが

彼女のことになると独占欲、という類のものなのだろうか。

彼女に対しての執着に
歯止めが効かなくなる。

彼女に何かあったらどうしよう。

好意を持っている奴がいたらどうしよう。

そんなマイナスな感情を抱きながら
ゆっくりと玄関から戻ってきたら
リビングには机上でバイブレーション音を鳴らす携帯電話があった。

『楽しんできます！』

Aからの連絡だった。

古い友人に会える、とずっと言っていたので
よほど楽しみだったんだろう。

文面からも明るさが伝わってくる程だ。

『やっぱ帰ってきて』

そう打っては、全削除して

『楽しんできてな！』

と返す俺。

ごめん、A。

俺さ、

うそつき、だよな。

「A、早く帰ってきてや…………」

声を細めてそう言っては頭を抱え、
愛の毒に浸され続けて夜を過ごす。