【ｲ.ﾅ.ｽ".ﾏ.ｲ.ﾚ.ﾌ".ﾝ】Dear My World【Ⅰ】 (ページ10)

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「俺は── …忙しくてあんまり来れないかもだけど、良い?」

「全然!大丈夫だ!」

「なら、決まりだね。」

弟は観念した様に、そうだねと言った。
元来、弟というものは姉に逆らえないように出来ているものである。哀れ弟よ。また、口車に上手い事のせられたと彼は落ち込む。しかし、これまでの経験上、姉は自分の益になる事しか無理強いはしない。多分。そう知っているので、不安はあまり無い。多分。あるとすれば、彼女が心配である。彼女は、

「A先輩、本当に大丈夫なんですか?」

「もちろん!大丈夫だよ?」

「でも、時間とか…」

「心配してくれてるの?ありがとね。」

弟の思考は木野により途切れた。Aは彼女の心配の言葉に感謝を伝え、微笑む。黒髪を紫と茜のコントラストの空に溶かしながら、笑みを浮かべるA。黒曜石の瞳の輝きが強調され、そこだけ既に夜の様だった。思わず息が漏れる光景である。その後、すぐに木野は自分の帰路に着くため分かれた。名残惜しそうな雰囲気であった。

「あ、もうついちゃった。」

そうしてまたしばらくお喋りを楽しみながら(専らサッカー議題か学校の話だが)歩いていると、角に差し掛かった。三人はまた明日、と別れの挨拶をして、姉弟は別れた後も仲睦まじい様子で帰って行く。それを一人見ていた円堂はぽつりと仲いいんだな、と独り言を漏らし、自分も家路に着いた。