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「やっべー、また遅れた…」
男にしては長めの黒髪を靡かせながら、ジャージ姿で弟は走っている。
放課後になり、部室へ向かおうとしていた彼。
しかし、丁度近くを通った教師に雑用を押し付けられてしまっていた。
「ちっくしょー…俺が断れないの知ってて…」
そうブツブツと文句を言いながら脚を動かす。
結構な距離を走っているが息切れひとつしていない。流石である。
橋の上から肘をつき、何かを見ている黒が見えた。
目を凝らして見る弟。あれは、
「ね、姉さん!?」
どうやらAの様だ。
弟は何でここにいるのか、と驚愕の表情をうかべながら慌てて駆け寄る。彼女は弟を一瞥し、やっほーと挨拶をする。
「やっほーって…時間は?大丈夫なの?」
「大丈夫だって。今日はもう終わり。」
本当に?と姉を訝しげに見ながら、弟も河川敷に目線を変える。今日も、あの元気印の後輩くんは小学生達とサッカーを練習している様だ。雑用が終わり、部室に向かうも空だったので、もしかしてと思いここに来たのである。
「あ、あの子。ナイスカット。」
「上手いな。」
まこのタイミングの良いカットに二人は感心する。
弟はふと、あ、と声を出す。ここまで走って来た理由を思い出したようだ。
「俺も行かなきゃ。」
「がんばっておいでー。」
「…ねえ、姉さんもさ、たまには、どう？」
おずおずと遠慮がちに姉に問う。
弟からの珍しいお願いに、少し驚いた表情を見せるA。しかし、すぐに微笑み、色の良い返事を返す。
「久しぶりにやろうかな!」
その言葉を聞き、弟の顔は喜色に染まる。姉は橋に凭れていた体を起こし歩き出した。彼もそれに続く。
なんとなしに、土手の道に目を向けたA。
そこにはクリーム色の、逆立った髪が特徴的な少年がいる｡
その彼の目は、じっと河川敷を見つめていた。
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作者名：茶太郎くん | 作成日時：2018年7月14日 0時
