【ｲ.ﾅ.ｽ".ﾏ.ｲ.ﾚ.ﾌ".ﾝ】Dear My World【Ⅰ】 (ページ13)

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11.学校、職員室でページ13

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「本当に良いのですね？」

「はい。」

草臥れた顔をした男性がA達に尋ねた。
なぜ彼女達がここ、職員室で彼に質問を受けているのか。なぜなら目の前の、全くやる気を感じさせない表情をした男性こそサッカー部の顧問兼監督、冬海卓その人なのである。その彼に、たった今入部届けを提出した。

「…分かりました。許可しましょう。」

「ありがとうございます。」

「しかし、Aさん。貴女は今までも特別処置を沢山受けています。…分かっていますね？」

「もちろんです。冬海先生?」

冬海は嫌味を言ったつもりだろう。しかし、それはAの前では一切意味は無い。彼女自身、事務所では沢山の大人に囲まれいるのである。嫌味など、それはもう聞き飽きるほどにだ。Aはにっこりと己の価値を理解した仕草で可愛らしく笑う。弟は始終そっぽを向き、真顔。対象的な姉弟だこと。冬海はぐ、と言葉に詰まる。

「では、失礼します。」

「え、ええ…」

冬海に断りを入れると、二人はすぐさま職員室を出た。職員室前のあの独特雰囲気の廊下を過ぎ、ある程度歩いたところで姉が口を開く。

「あ～…ほんっとあいつ苦手。」

「それな。早く飛ばされないかな…」

などと不穏な会話を繰り広げながら、お揃いの艶やかな黒髪を揺らしながら歩く二人。そろそろ始業のチャイムが鳴る。

「じゃ、また放課後ね。」

「うん。」

互いに声をかけ合い別れた。その二人の表情はいつもより、明るく楽しげだった。