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言いながら、Aが指さす先は、呪霊の長い首の中腹あたり。
「まだ三人は生きてるわよ。 でも、あとの三人は時間勝負ね」
唖然とする真希たちを前に、Aはなんてことないように続ける。
「あの目は、弱くて小さな呪霊が沢山集まった結果よ。 一人じゃなぁんにも出来ないから、ああやって大きいのに寄生しているの。 ふふ、でもそのせいで自分たちの取り分が少なくなって文句を言うなんて、我儘よねえ〜」
Aは雄弁に語りながら、なぜかこの状況下で楽しそうに笑っている。
否、何かを待ち望んでいて、その瞬間が訪れるのを心底楽しみにしているような、そんな顔だった。
「ふふ、でも全部集まるとこんなに強くなっちゃうなんて。 ねえ、これ何級だと思う?」
「…二級はねえな。 準一級か、もしくは…」
Aの問いに答えた真希は、それ以上続けなかった。
未だ虎視眈々とこちらを狙う無数の視線を感じながら、一同が次の動きを考えていると、
「悪い、しくじった」
呪霊に吹き飛ばされたパンダが、姿を変えて戻ってきた。
元の柔らかさは無くなり、筋肉質な体と、口から覗く牙が特徴的だ。
「あら? パンダくん、随分成長したのね」
「俺は呪骸だからな。 核が入れ替わったんだ」
「なるほど〜」
それはつまり、さっきの呪霊の攻撃をまともに喰らえば致命傷となることを意味する。
いくら特級と準一級呪術師がいるといえど、もはやこの任務は、一年生には手の余るものとなっていた。
「じゃあ、作戦を言うわね〜」
しかし、Aはぺちんっと締まらない音を立てながら手を叩く。
Aにとって、撤退の選択肢は欠片も無いらしかった。
「甲羅にくっついている余計なのが沢山いるけれど、あれを剥がせば元の呪霊は大きいだけでたいしたことないわ〜。 だから、私が大きいのを止める間に、まずは少しずつ周りを剥がしていきましょう」
「剥がすって、どうやって…」
「狗巻くんの呪言で♡」
Aの言わんとするところを理解すると、質問した乙骨を含めて一同は息を呑んだ。
「大丈夫よ〜。 いっぱい使うから疲れちゃうと思うけど、相手自体は強くないから死なないわ」
Aはうっとりと目を細め、頬を赤く染めて続ける。
「でももし死にそうになったら助けてあげるわ…だって、こんなところで壊れちゃったら、勿体無いもの」
誰も、その選択にすぐには肯定の意を示せなかった。
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カナデ(プロフ) - 頭のイカレた美女が大好きです!!!更新待ってます! (2022年10月29日 23時) (レス) @page30 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポチ | 作成日時:2021年3月16日 22時