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「…無駄な、思考…?」
乙骨はAの言うことを理解できないままに、耳に入って来た言葉だけを鸚鵡返しする。
抽象的なことを言われて困惑しつつも答えを探す乙骨だったが、Aは最初から習うより慣れろのつもりで対峙している。ゆえに、乙骨の理解を待たずして次の話を始めてしまう。
「そう。 例えば、突然目の前に切っ先が迫ったら、」
言いながら、Aは乙骨と打ち合っているのとは反対の手を背中に隠して、その袖元に仕込んでいた2本目のナイフを手の中に滑らせた。
そして、乙骨と一度強く打ち合った直後に、なんの予備動作もなくその手の中のナイフを乙骨の眉間に突きつけた。
さっきまで打ち合っていたダガーナイフとは別の刃物が突然視界に入り込んだせいで、一瞬、乙骨はその瞼を閉してしまう。
「反射的に、目を閉じるで…」
「っ、」
しかし、乙骨は、目を閉じたことを自覚する前に、無意識にその瞼を無理やり持ち上げて、振り上げた刀でナイフを弾いていた。
――カラン。
「…はぁっ、はぁ…はぁっ…」
ナイフが地面に落ちる音がしてから数秒。僅かな静寂の中には、乙骨の荒い息遣いだけがあった。
しかし、つうっと乙骨の眉間から赤い雫が伝ったのを見て、ようやく我に返った観戦組が口を開く。
「ちょっ、オマエ…! 寸止めじゃなかったのかよ!?」
「あっぶねぇえ! あとちょっとで憂太の頭貫いてたぞ!?」
「しゃけ!!」
真希、パンダ、狗巻の順で流石にやり過ぎだと講義するが、Aの耳には一切届いていない。どころか、珍しくAはいつもの笑みを消して、まん丸に目を見開いていた。
「…やっぱり、才能あるわよ。 乙骨くん」
「えっ、と…?」
乙骨でさえ、咄嗟のことで自分が何をしたのか理解しきれていなかった。ただ、目の前に
「中には小綺麗な戦い方をする人も、器用な戦い方をする人もいるわ。 でもやっぱり、私は、乙骨くんにはそっちのほうが合うと思うのよ」
「え、ええっと…そっちって…どっち…?」
「ふふ、予想より1歩先に行かれちゃった。 でも、これなら本番でもギリギリ生き残れるかもしれないわ〜」
地面に転がったナイフを拾って満足気に笑うAは、乙骨に詳しく説明する気はないらしい。
乙骨は、一方的な会話にただただ首をかしげていた。
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カナデ(プロフ) - 頭のイカレた美女が大好きです!!!更新待ってます! (2022年10月29日 23時) (レス) @page30 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポチ | 作成日時:2021年3月16日 22時