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――果たして奪われたのは、視線だけか、それとも心までか。
「ぃ、く…ら…」
この甘ったるい空間から逃げるように小さく呟いた言葉は、後ろの高校生達の事を指していた。
はやく高校生達を高専で見てもらわないと、と。
狗巻はこの状況を脱したいがためにそう言ったが、それを聞いたAはきょとんと目を丸くしてから、にっこりと微笑んだ。
「そう。 そういう事なら、さっさと治してしまいましょ」
名残惜しそうに狗巻のもとを離れてから、ゆっくりと高校生達のもとへと足を進める。
その顔は、つい数分前とは違って心底機嫌の良い笑みを称えていた。
「一番危なそうな人は〜…あなたね」
言いながら、最初に助け出した高校生の、ユキという女の側にしゃがみこむ。
Aの予想を超えて持ちこたえたほうだが、もう本当に限界が来ていたのだろう。
もはや息をしているのかどうかすら怪しいほどの女に、Aは手をかざす。
すると、ぽうっと淡い光が女を包み込み、わずか数秒にして女の息や、顔色や、体温が全て生きた人間のものへと変わった。
「なっ、オマエ…! 使えたのか!?」
驚く真希を他所に、Aはそのまま残りの五人にも反転術式を使用して、ふうっと息をついた。
「ふふ、貴方達にも感謝しなくっちゃ〜。 貴方達のおかげで、今狗巻くんはとっても良い顔をしてくれてるの…♡」
呪霊との戦闘中は術式を使いっぱなしで、その後六人に反転術式を使ったにも関わらず、Aの顔には疲れの色が一切見えない。
その呪力量を考えてぞっとした真希達は、復活して泣きながら喜ぶ高校生たちを無視して再度狗巻にまとわりつくAを眺め、何故かひどく疲れた気持ちになった。
「…とりあえず、悟呼ぶか」
「ついでにタオルと着替えだな」
「Aさん、あの格好のままで大丈夫かな…? 上着羽織ったほうがいいんじゃ…」
パンダ、真希、乙骨の順にそう言いながら、初めての一年合同任務は幕を閉じたのだった。
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カナデ(プロフ) - 頭のイカレた美女が大好きです!!!更新待ってます! (2022年10月29日 23時) (レス) @page30 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポチ | 作成日時:2021年3月16日 22時