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「――ぷはぁっ、」

「狗巻君! Aさん!」


Aが池の中から顔を出すと、すぐに乙骨が駆け寄ってくる。

Aは濡れて額に張り付く前髪をかき上げてから、狗巻を池から引き上げようとして脇の下に手を入れた。

制服のまま飛び込んでいたせいで、狗巻の体は随分重くなっていた。

「んっ、」と思わず力む声を漏らしながら狗巻を陸に上げ、自身も続いて上がる。


「ごほっ、ごほっ…げほ、」


水中で空気を失って溺れる直前だった狗巻は、呼吸の再開とともに咳き込んで肺にたまった水を吐き出した。

直前で呪言を酷使していたせいもあってか、吐き出された水は赤黒く濁っている。

乙骨に背中をさすられながら生理的な涙を浮かべ、泥と血にまみれた体で汚水を吐く狗巻の姿は、Aが求めていた以上のものだった。


「〜〜っ!! 最っっ高よ、狗巻くん…!!♡」


頬を染め、上がる口角を抑えきれずに自身の肩を抱いて悶えるA。

すぐに池に助けに入らなかったAの思惑をようやく悟った真希とパンダは、ドン引いた目でAを見た。


「…オマエ、嘘だろ…」

「ふふ。 ちゃんと、死にそうになったら(・・・・・・・・・)助けるって言ってたもの〜」


耐えきれず漏らした真希だったが、周りの反応など見えていないかのように幸せそうに微笑むAにそう言われては、それ以上何かを言う気にはならなかった。

もはやAに何を言っても無駄だと諦めたのだ。

Aは、未だ自分の世界に浸りきっている。

狗巻に近づき、初めての時のように、頬に手を添えてそっとその顔を持ち上げる。
涙を蓄えてうるんだ狗巻の目と視線を合わせながら、口から伝う血の混じった汚水を指で拭って、うっとりと蕩けた顔をした。


「…あぁ、好き。 大好きよ、狗巻くん」


砂糖を煮詰めて融かしたようなどろりとした響きだった。
何度も、「好き、大好きよ」と繰り返しながら狗巻の頬を撫で、濡れた髪を梳き、唇を指先でなぞる。

Aの髪も汚水で濡れ、葉や小さな枝等のゴミが所々に絡まっている。制服の白いブラウスにもゴミがへばり付いていて、胸元は透けて下着の色をうつしている。

今のAには、池に飛び込む前のような繊細な美しさは無い。

しかし、確かに汚水と小さなゴミがAの美しさを損なっているはずなのに、何故か真正面で顔を合わせている狗巻は、そんなAから視線を反らせないでいた。

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カナデ(プロフ) - 頭のイカレた美女が大好きです!!!更新待ってます! (2022年10月29日 23時) (レス) @page30 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ポチ | 作成日時:2021年3月16日 22時

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