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なるほど、とAは六人の高校生グループを見て思う。
男子三人、女子三人の六人組。
トリプルデート、という言葉が世間にはあるが、デートにしてあまりにも場所を選ばなさすぎる。
自業自得な結果だというのに、もう一人の女子高校生までもが横たわる男子高校生に手を添えながら助けを請い始めた。
Aは、そんな六人の愚か者の顔を代わる代わるに見ていく。
一人目、ハズレ。二人目、ハズレ。三人目…
「(全員そそらない顔ね〜。 やぁーめた)」
好みの顔があれば助けてもいいか、と思っていたAだったが、並ぶ六つの顔はどれも平々凡々だ。
僅かに残していた興味さえも失ったAは、泣き崩れる高校生達に背を向ける。
「私、あれ祓ってくるからあとよろしくね〜」
面倒ごとを押し付けるように去っていこうとしたAの視界の隅に、ちらりと狗巻が映った。
そういえば、今の狗巻はどんな顔をしているのだろう。
死にゆく一般人を前に、救えない人達を前に、一体どれほど素敵な顔をしてくれているのだろう、と。
期待を込めて小さく振り向けば、そこに映った狗巻は、悔し気に顔を歪めるわけでもなく、悲し気に顔を曇らせるわけでもなく。
「…じゃ、げ」
未だ泣き続けている高校生達を安心させるように、彼らの肩をぽん、と叩いて目元を和らげていた。
助ける術を持っていないのに、残酷な優しさだなとAは思う。
と同時に、期待していた表情が見れなかったことに落胆した。
後ろで何か話している狗巻と高校生達を放って、Aはさっさと呪霊の方へと足を進める。
視界を奪われ、それでも尚獲物を求めて首を振り回す哀れな呪霊の前まで来て、Aはひらりと地面を蹴って飛び上がる。
もはや弱りきった呪霊はAの気配すら正しく感知できないようで、暴れているだけのでたらめな攻撃を軽く避けながら、柔らかい首の部分を狙って、呪力を纏った足を叩きつけた。
ばちっ、と黒い光が迸って、呪霊の首が弾け飛ぶ。
それと共に、銀色の何かが呪霊の中から飛び出した。
「あれは…?」
首を傾げつつ、目を凝らすAの背後から、必死に絞り出したような高い声が聞こえた。
「あ、った…! あれ、あれが…!!」
空中を舞う銀色を指さして目を見開く女子高校生。
その顔は焦燥に駆られていて、駆けだそうと立ち上がるが、上手く力の入らない体はずしゃりと地面に崩れ落ちてしまう。
その間に、銀色はどぽんっと池に落ちて沈んでいった。
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カナデ(プロフ) - 頭のイカレた美女が大好きです!!!更新待ってます! (2022年10月29日 23時) (レス) @page30 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポチ | 作成日時:2021年3月16日 22時